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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
三笘の1ミリ、“VARに頼るPK”、長すぎるアディショナルタイム…厳密だったカタールW杯「人が入る余地を残したい」レフェリーの本音
posted2022/12/27 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
――カタールW杯は最先端のテクノロジーが駆使された大会にもなりました。象徴的だったシーンの1つが、あの日本vsスペイン戦での「三笘の1ミリ」です。詳細は割愛しますが、折り返しがゴールラインから完全にボールが出ていないとVAR(ビデオアシスタントレフェリー)で確認されたことでゴールと判定されました。
家本政明(以下、家本/敬称略) 主審は最初、ゴールキックと判断しましたけど、それはもう致し方ないこと。そのなかでテクノロジーがどう(ジャッジを)カバーしていくか、という意味で確かに象徴的なシーンではありましたよね。聞いたところによればゴールライン上に2台のカメラが(ラインを)挟むように設置されていて、連続してプレーを切り取ることができるなどカメラの性能もかなり高い。SNS上で1.88ミリだけボールがライン上に残っているという発信が話題になっていましたが、FIFAのほうで数字まで提示していくようになれば、もっと説得力を帯びると思うんですよ。
――今回はセミオートオフサイドテクノロジーも採用されました。FIFAの説明によればスタジアムに12台設置するトラッキングカメラの情報とボール内蔵チップによってオフサイドを正確に判定するというもの。腕や足が出たところも見逃さないというのはちょっとした衝撃でしたし、かなりオフサイドの数が増えました。
「副審が必要ない」という議論も?
家本 レフェリーとしては判断できる事実をテクノロジーが後押ししてくれるのはありがたい。正しい情報が画像や数字を通して公になればフェアにもなります。オフサイドの場面は3Dの画像で示されますが、これもまた数字で出せると思うんですよ。足が何センチ出ていた、とか。
テクノロジーがもっとフットボールの世界に入ってくるのは大賛成ですし、この先、もっとセンサーシステムなどが発展していけば副審が必要なくなるっていう議論があるかもしれません。つまり主審と第4審判、VARチームでやる、と。
ただテクノロジーの発展と同時に、今後はどんどん二極化が進んでいくでしょうね。そうなれば世界トップのフットボールシーンではそこに合わせていくことができても、ローカルのフットボールではやっぱり難しくなる。テクノロジーの発展は歓迎すべきことではあるんですけど、一方で、人が入る余地をちゃんと残しておかないとフットボールじゃなくなってしまうんじゃないかと懸念する思いもあります。
――フットボールじゃなくなってしまう、という意味は?
家本 フットボールは、自由度の高いスポーツだし、人間性を重視したスポーツ。競技規則も、たとえば野球みたいに細かくルール設定されていません。いい意味でファジーかつ自由度が高いからこそ、クリエイティブなプレー、魅了するようなプレーが生まれてくると思うんです。テクノロジーに委ねる事実の判断と、主審の主観による判断という軸が崩れないようにしなければならない、というのが僕の思いですね。