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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
“伝説の決勝”のウラに審判の神ジャッジが!? 元国際主審・家本さんが斬るW杯決勝戦「シモンさんは“退ける”レフェリングができていた」
posted2022/12/27 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
――レフェリー目線でカタールW杯を見たなかで、特に印象に残った試合を挙げてもらうとしたら。
家本政明(以下、家本/敬称略) 好印象という意味では、開幕戦のカタールvsエクアドル戦と、決勝のアルゼンチンvsフランス戦ですね。現代フットボールはフィジカル的な要素が高くなってきて、インテンシティはもちろんのこと特にプレースピードが上がっており、ペナルティーエリア内での事象に正しく対処するには良いポジションを取らなければなりません。そのためには動きの質と量いずれも必要で、レフェリーにもフィジカル的な要素が強く求められています。つまりはポジショニング&ムーブメント。
この前提に立ったときに、まず開幕戦を担当したイタリア人主審のダニエレ・オルサートさんはポジショニングも動きの質、量ともに素晴らしく、判定も安定していました。それに選手の安全に対するところはやや厳しめというか、丁寧に基準を示したことでこの大会における(FIFAの)指針も分かりやすく伝わってきました。
決勝はJリーグでも笛を吹いたシモンさん
――もう一つはポーランド人主審シモン・マルチニアクさんが担当した決勝戦。彼は2013年にJFAとポーランドサッカー協会との審判交流プログラムによって来日して、Jリーグでも2試合、笛を吹いているんですよね。
家本 僕も以前に同じプログラムでポーランドに1カ月ほど行ったことがあり、彼がアテンドしてくれたんですよ。来日したときも一緒にご飯を食べたりもしました。まだ若かった彼は国際主審を目指していて、その候補にノミネートされたという話も聞きました。
そんなシモンさんがW杯の舞台で、それも決勝を任されたことは私にとっても喜びでした。そして冷静にレフェリー目線で見ても、素晴らしいパフォーマンスでした。
前半21分にウスマン・デンベレがアンヘル・ディマリアを倒したシーンは私も一瞬、(PKというジャッジは)厳しいかなって思いましたけど、事象を確認するとこれをよく見極めたなと思いましたよ。デンベレの右足がディマリアの左足に引っ掛かった小さなコンタクトであったにせよ、これは反則の部類に入ると言っていい。かつ、ベストに近いポジションを取っていたのもさすがでした。本当に細かく言えば、3mほど外側なら最高中の最高だったとは思うんですけど(笑)。
――細かいところで感じたシモンレフェリーの素晴らしい点をもう少し教えてもらいたいです。