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「目覚ましい変革は戦術とVAR判定、GKの進化、その結果…」トルシエも絶賛するカタールW杯が史上最高の大会になった理由
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/12/22 17:01
まさしく大団円となったカタールW杯を、運営面も含めトルシエは絶賛した
——コレクティブなチームが多かったせいかどうかわかりませんが、若い選手の活躍が大会前の予想ほどではなかったのではないでしょうか。
トルシエ それでもアメリカの若い世代の選手たちは、優れた能力をこの大会で披露した。カナダにもいい印象を受けた。この2カ国は次のW杯のホスト国でもあり、4年後の大会に向けて選手が経験を積むいい機会だったといえる。
またモロッコの躍進も、十分な規律とメンタリティ、モチベーション、ダイナミズムとディターミネーションがあれば、あれだけのことができることを示した。それはアメリカやカナダには欠けていたことかも知れない。アメリカには効率があったから、イングランドとあれだけの戦いができた。負けはしたがアメリカとカナダは、若い世代の可能性を見せたといえる。
史上最高の大会
——ジャンニ・インファンティーノFIFA会長は、カタール大会が運営面では史上最高の大会だったと述べていますが、あなたも同じ意見ですか。
トルシエ インファンティーノのコメントは、今現在進行中の大会へのコメントして語られたものだ。もしもすべてのチームの監督や選手、ジャーナリストやサポーターに同じ質問をしたら、移動の容易さや100%W杯に浸りきれることなど、カタール大会はいろいろな部分でとても良かったと答えるだろう。
私たちは環境に浸りきることができた。自由に移動してピッチを見ることができたし、チームの練習も見られた。その気になれば1日に2試合を見ることもできた。様々な国のサポーターと出会い、交流することもできた。カタールはW杯村とも呼べる空間を大会期間中に作り出した。訪れたものにとっては、とても実り豊かな大会であったのは間違いない。自ら参加し、雰囲気と熱気に触れることができた人々にとっては。
私の場合も含めW杯に完全に浸りきることができた。自分がこの大会の役者のひとりであると感じた。そう感じたのは、大会期間中の日常をW杯とともに生きたからだ。試合以外の時間にも、W杯はドーハの街中に溢れていた。建物の中にも砂漠にも飛行機の中にも溢れていた。本当に素晴らしく、大成功を収めた大会だと思う。
それとは別に自国に残ったままテレビでW杯を観戦した人々——私も当初はそのひとりで、BeINスポーツ(カタール資本によるスポーツ専門テレビ局)で大会を見ていたが、試合や優れたルポルタージュなど24時間番組を流しっぱなしだった。日本をはじめとする他の国々も状況は同じだっただろう。大会自体には直接触れられなくとも十分に楽しめたと思う。
カタールはW杯村を作り出し、そこにすべての要素を盛り込んだ。セキュリティにもスタジアムへの移動にも問題がなかった。ときにパニックに陥ることもあったが、最高の大会であったのは間違いない。観衆が作り出した雰囲気が素晴らしかったし、開幕や決勝のセレモニーもよかった。カタールを心から祝福したい。
カタールを訪れるのは2004年以来で、タミーム・ビン・ハマド・アルサニ首長や彼の弟と親しい関係にあり、彼らの招待を受けての訪問だった。W杯トロフィーの後ろに並ぶふたりの姿を見たとき、この大会が彼らの努力の成果であったことも感じずにはいられなかった。自分がこの場にいることに、思わず涙が出てきた。すべてのスタートの場面に私は立ち会っていたからだ。
だから私は、本当に素晴らしい大会だったと個人的には感じている。
——そうですか。メルシー、フィリップ。