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[岡崎慎司の目]システムや戦術ではない強欲さが足りなかった vs.コスタリカ 11.27
posted2022/12/08 08:01
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Ryu Voelkel
守備を固める相手に苦戦するのは、今に始まったことではない。過去の代表も含めて、日本が長く抱えるテーマだ。
現実的に戦うのであれば、コスタリカ戦は0-0でいい試合だったと思う。
しかし後半36分、吉田麻也が繋いだパスが相手に渡ったことで失点する。残り10分を切って、コスタリカがギアを入れたな、と感じた。テレビ観戦の僕の感覚とピッチ上の感覚は異なるのかもしれない。けれど、事実として試合が始まり約80分間、日本は得点が奪えないでいた。後半、伊東純也や三笘薫、浅野拓磨が投入され、攻勢にでる時間が増えていたが、最低限の勝ち点1を手にする判断があっても良かったはずだ。
「また……。今まで、こんなにも頑張ってきたのに、なんでお前は……」
吉田が浮き球のパスを出した瞬間、悪い予感とともに僕はそんなふうに思った。
引き分けを選択する戦いは難しい。けれど、失点しなければ、負けはない。いかに試合を終わらせるかという意味で、現実的な判断をしてほしかった。あの場面では、大きく蹴り出すなどはっきりしたプレーを選択すべきだった。長くチームメイトとして戦い、吉田の高い能力やたゆまぬ努力、積み重ねてきた経験を知るからこそ、そう感じてしまう。
コスタリカがドイツとは違うということは誰もがわかっていたはずだ。守備を固め速い攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。そういう相手に対してのゲームプランも共有していただろう。だが、実際試合が始まってみると、コスタリカは球際での強さを見せたが、カウンター攻撃を見せることはほとんどなかった。にもかかわらず、前半のポゼッションではコスタリカが日本をわずかに上回っている。緩やかな試合のテンポを作っていたのはコスタリカで、日本はそれに付き合ってしまったように見えた。戦前の想定と現実の試合との間に生まれたギャップに苦しんでいるようだった。