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「なぜ日本人はそんなに凱旋門賞にこだわるの?」外国人の素朴な疑問に“世界の合田”はどう答えたのか「なにせ2着が4回もあるわけで…」
posted2022/11/26 17:26
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Getty Images
もう少し、あとほんの少しで頂に手が届くはず――。そんな期待もむなしく、2013年のオルフェーヴルとキズナ(4着)以降、多くの日本馬が凱旋門賞に挑戦したにもかかわらず、5着以内に入ることができていない。トレヴやエネイブルといった“怪物級”の名馬と遭遇する・しない以前の段階で、勝負のステージにさえ立てていないのが現状だ。
海外の関係者「日本馬は起伏のないトラックで強いね」
なぜ日本馬は凱旋門賞で好走できなくなってしまったのか。日本屈指の海外競馬通・合田直弘氏は「非常にタフなロンシャンの馬場、それを生む現地の気候など複合的な要因があり、難しいですが……」と前置きしつつ、ひとつの課題としてコースの高低差をあげた。
「ヨーロッパの関係者がよく言っているのは、『日本馬は起伏のないトラックで強いね』ということ。これはその通りで、ドバイ、香港、サウジアラビア、それからアメリカなど、フラットに近いコースで走れば日本馬は本当に強い。それはいまや海外でも共通認識になっていて、『このレースは日本馬が出るから避けよう』という話も耳にします。一方で現在も苦戦しているのは、やっぱり坂なんですよ。特に上り坂は大きな課題だと思います」
凱旋門賞が行われるパリロンシャン競馬場の高低差は10m。また、ロイヤルアスコット開催やキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS、英チャンピオンズデーの舞台であるアスコット競馬場は20mと、日本でもっとも高低差の大きい中山競馬場(5.3m)の約4倍という厳しいコースとなっている。
「いまにして思うと、2006年にハーツクライがキングジョージで3着に入ったのは歴史的な好走だったんだな、と。あのアスコットで、ハリケーンランやエレクトロキューショニストと大接戦ですから。みなさんあまり言いませんが、ステイゴールド産駒だけでなく、ハーツクライの子も海外で強い馬が多い。ジャスタウェイやリスグラシュー、アメリカで走ったヨシダもそうですね。なんにせよ、日本馬がいま克服しなきゃいけないファクターのひとつは『坂をどうするか』ということだと思います」