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大橋未歩「エゴサ、4種類でしちゃうんですよ」人気フリーアナウンサーが悩み、考えた“誹謗中傷問題”「私のことを嫌いな人もいる状況が健全」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/12/10 11:03

大橋未歩「エゴサ、4種類でしちゃうんですよ」人気フリーアナウンサーが悩み、考えた“誹謗中傷問題”「私のことを嫌いな人もいる状況が健全」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

テレビ東京退社後は、フリーアナウンサーとして活動の幅を広げている大橋未歩さん

今も思い出す「野村克也さんの言葉」

『5時に夢中!』『スッキリ』などテレビで活動するほか、厚生労働省循環器病対策推進協議会委員や救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会の構成員を務める一面も。また、演技の世界にも挑戦し、日下玉巳監督の映画『冗談じゃないよ』で映画にも初めて出演する。

 挑戦するエネルギーはどこから来るのか。大橋はこのような話をする。

「野村克也さんの言葉は、よく思い出していますね。『地位が人を育てる』。楽天監督時代によく取材させていただきました。ヤクルト時代は古田敦也さんを4番に据えるですとか、地位をまず与えるという育成をされていたと思うんですけれども、そうすることでポストに追いつこうと自覚と責任感が芽生えて、それがエネルギーとなり成長していく人材育成ですね。

 スポーツを離れた今はコメンテーターなどの仕事もしているので時事問題について考えたりもするのですが、例えばジェンダーギャップの話題を目にした時に、今でも野村克也さんの顔が浮かびます。クオータ制で女性に役職を一定数割り当てるのはどうだろうかと考えたりすることもあります。自分にはとうていできないという役割に直面した時にまず信じてやってみるということは、自分にとっても何かに挑戦するときの指針になっています」

自己分析は「ポジティブ勘違いですかね」

 現在の肩書きにはフリーアナウンサーとある。アナウンサーとは? と尋ねるとこう答えた。

「一方で次のステージとして肩書きに拘泥したくはないとも思っていたりします。副業も当たり前になって肩書きではなく、仕事の質や内容が問われるようになっていくんだろうし、働き方がもっと流動的になっていくべきだと思います。アナウンサーは言葉のスペシャリストと思われることもあるかもしれませんが、ある場面においてはあえて言葉を発しないことで伝えたりもするんですよね。語彙力があってもその出元の人間が軽かったら意味がない。

 だからアナウンサーとは? という質問に応えるとするならば、こうありたいなと思うのは、人の心を想像し続けること。仕事の内容は報道バラエティスポーツと多岐に渡りそれぞれの専門家ではないので、その場その場の当事者の顔を想像することが大事だと思っていて、その想像力を持ち続けたいとは思います……。いやあ、答えは出てないです」

――「大橋未歩」とは?

 そう尋ねると、困ったような笑顔が広がった。少し考えてから答えた。

「ポジティブ勘違いですかね。あまりできないと思ったことがなくて、なんでもやれるって勘違いしちゃって、とりあえず走りだしちゃって後から追いついていく……。簡単に答えられないですよね(笑)。会社やめるときもどうにかなるだろうと思っていたし。

 そんなふうに思わせてくれたのは脳梗塞の経験も大きいですね。脳梗塞が4カ所みつかったけれど脳機能も身体機能も正常に動いていて、主治医に『なんでなんですか』って聞いたら、『死んだ部分の細胞を他の部分が代わりに果たしてくれてますよ、代替してくれてますよ』と言われました。

 世の中には勝ち組とか負け組とかいう社会を分断するような考え方もあったりするけれど、生まれながらにしてものすごい機能が人間には与えられているんだなと思ったときに、人間は勝ち負けではなくてみんなすごいんだなと思えて。人間を信じているみたいなところがあります。信じているから自分自身のことも信じて勘違いし続けられるんだろうな、と」

 スポーツをはじめ、今日までさまざまな場で走り続ける根幹があった。

(撮影=石川啓次)

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「取材してきたけどインタビューできない…」五輪3大会担当、大橋未歩(44歳)が感じていたジレンマ「局アナとしては限界を感じた部分だった」

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