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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
東大卒投手が戦力外後ナベツネに直撃「“何だこの本は!”とムッとしつつ…」ホークス編成・フロントで経験した“球団経営ウラ話”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2022/11/17 11:02
東大卒の元プロ野球投手・小林至さんに今までの野球人生と現在を聞いた
「孫さんは『目指せ!世界一』を球団のビジョンとして掲げました。その実現、具体的にはMLB王者との世界一決定戦が私の大事なミッションとなりました。MLBの国際部長だったポール・アーチーさんやアジア総局長のジム・スモールさんなどと何度も議論しました。MLB機構の本部(ニューヨーク)に孫さんと直接乗り込んだこともありました。
ただ、ソフトバンクがチーム買収して以降、一度もリーグ優勝していない。これではいけない、そろそろフロントを変えないと、ということで王貞治会長から“君は野球選手でもあったし編成をやってみろ、俺がバックアップするから”と言われたんです」
三軍制を取り入れたのはなぜか
編成育成にあって、当時のソフトバンクを語るに欠かせないのが三軍制である。小林氏はこのように回想する。
「フロントの責任者として手掛けたことの一つが、三軍制でした。コンスタントに優勝争いができるチームを作るためには、選手の育成が不可欠ですが、そのためには二軍では足りない。二軍は、ケガや不調で調整を要する一軍選手や、何かあったら一軍に呼ばれるような中堅選手で出場枠はほぼ埋まり、発展途上の若手選手は試合にあまり出られませんから。選手は試合に出ないと成長できません。MLB各球団が、ドミニカのアカデミーを合わせて選手300人。“六軍体制”なのは、勝利のために必要だから、そうしているのです。
これまで日本では三軍以下の機能を社会人、とりわけ企業チームが代替してきた。しかし、企業チームは大きく数を減らし、残ったチームも正社員として選手を抱えることも難しくなってきた。三軍の創設は、自然の流れだったと思います」
ホークス黄金時代を築き、研究者に
三軍の創設とともに、小林氏はフロントとして内川聖一、李大浩、デニス・サファテなど大物選手を次々と獲得。千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成など三軍上がりの選手の成長もあって、福岡ソフトバンクホークスは2010年から昨年までリーグ優勝6回、日本一7回という最強チームになっていく。
小林氏は2004年末に発行した書籍で訴えた政策を、ソフトバンクという球団で実際に行ったことになろう。
2014年末でホークスを退団した小林氏は、研究者に戻った。