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新庄剛志が苦手だった? ロッテ吉井監督が「ボコボコに打たれた」と語る苦い記憶とは…“野村克也”直伝のネーミング対決にも注目
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byNaoya Sanuki / JIJI PRESS
posted2022/11/14 17:00
現役時代の吉井理人(右)が最も苦手としていたのが新庄剛志だった。2人はメジャーの舞台でも対戦経験がある
試合は延長10回に後続投手がケビン・マース内野手にサヨナラ打を浴び、ヤクルトは敗れた。試合終了は21時28分。あの時、あの場面でシュートが抜けなければ21時前には終わり、勝利の美酒に酔っていたはず(ちなみにお酒はたしなむ程度で、基本的には飲まない)。
世の中は巨人、中日、広島の三つ巴から巨人が大逆転劇で抜け出すメークドラマの真っ最中。劇的な形で幕を閉じたこのヤクルトと阪神の2チームの一戦はBクラスチーム同士のただの消化ゲームだった。だから聖地・甲子園の公式発表の入場者は8000人と記録されている。おそらく、この試合のことを覚えている人は少ないだろう。しかし、すっかり白髪となった男の胸には、ホームランを打たれたときの残像がハッキリと残っている。
「恐れないから、どんどん踏み込んでくる」
この印象的な出来事もあり、新庄との過去の対戦について「ボコボコに打たれた。印象としては七割ぐらい打たれている」と吉井は振り返る。それは実際の数字を見ても明らかだ。
ヤクルト時代(対阪神)とオリックス時代(対日本ハム)の6年間で、59打数22安打、打率.373、4本塁打、11打点。本人が言う「7割は打たれた」はさすがに大げさではあるが、確かに打たれていた。なぜ打たれたのか。その理由として得意としていたシュートを新庄が怖がらなかったことを挙げる。
「(新庄は)シュートを恐れないから、どんどん踏み込んでくる。自分は右打者のアウトコースのコントロールが悪くて自信がなかったからインコースのシュートを詰まらせたり、シュートを意識させることでポイントを前に出させてフォークで空振りを取る形で抑えていた。その作戦が彼には通用しなかった」
シュートを投じて死球になったことがあった。それでも新庄はその後も恐れずにさらに踏み込んできた。対戦していてこれほど怖い相手はいなかった。
他にも近鉄時代にはダイエー佐々木誠外野手や岸川勝也外野手、メジャー時代にはラリー・ウォーカー外野手やジェフ・バグウェル内野手も苦手だった選手として名前を挙げるが、なんといっても一番先に思い出すのは新庄。来年はパ・リーグで監督同士として相まみえることになる。注目のカードといえる。