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中村俊輔が示し続けた「サッカーは技術と頭脳のゲーム」 横浜F・マリノス時代の“忘れられない90分間”「時代の流れに抗うかのように…」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/10/28 06:00
2013年シーズン、横浜F・マリノス時代の中村俊輔
中村はインプレーでは伝家の宝刀である左足を、アウトオブプレーではレジェンドという立場を存分に利用して、ピッチという空間と90分という時間を支配した。
若手のころのように身体は動かないかもしれない。だが圧倒的な技術を賢くつかえば、思いのままにゲームを創ることができる。最後の最後に優勝は逃したが、サッカーが技術と頭脳のゲームであることを体現した。それが2013年の中村だった。
時代の流れに抗うかのように
四半世紀を超える中村の現役キャリアの中で、サッカーは大きく様変わりした。
ジーコが日本代表監督に就任したとき、世間では“黄金の4人”と持て囃された中村、中田、小野伸二、稲本潤一の創造性やテクニックが大きくクローズアップされた。だがやがて運動量が強調されるようになり、近年ではインテンシティという言葉が市民権を得るまでになった。
90分走り続ける走力と壊れない強靭な肉体が優先される現代サッカーの中で、中村は時代の流れに抗うかのようにプレーした。彼にはそうすることしかできない。周りが走るほど、中村の上手さと賢さが際立つことになった。
30代半ばのベテランが、ピッチに立つだれよりも頭脳をフル回転させて、走力やインテンシティに恵まれた若者たちを振りまわす。あれから10年が経ったが、筆者は2013年の中村よりも面白いJリーガーに出会えずにいる。
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