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EKIDEN News代表の西本武司が語る「長距離練習ではなくタイムトライアルこそパーソナルベストを出せる理由」
posted2022/10/27 11:01
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Yuki Suenaga
厚底シューズが一般化したことで、練習方法もこの3年で大きく変化した。大会に出る人も、まだ先と思っている人も取り入れてほしいのがタイムトライアルだ。距離を踏まなくてもPB達成が狙える、その効果を西本武司さんが説きます。
マラソン練習は短い距離でも十分
この3年で大きく変わったものといえば厚底シューズです。コロナ前は速く走れるランナーのものという印象でしたが、この3年で初心者から上級者まで楽しめるものへと変化しました。シューズが変わったことで、練習方法やリカバリーの常識も変わりつつあります。
これまでマラソンでPBを出すためにはとにかく長い距離を走らないといけないと言われてきました。ただ、ロング走は退屈で苦手という人も多いでしょう。ところが田中希実選手のお父さんでコーチの健智さんは「長い距離を走るよりも、レースペースで150m×10本やった方がいい」と言います。新谷仁美選手が今年の東京マラソンで自己ベストを更新したときも月間700kmしか走っていませんでした。
長い距離をダラダラと走るよりも、レースペースでも体に負荷なく走れる力をつけることが大切で、短い距離しか走っていなくても、十分マラソンは走れます。そこで市民ランナーの方にも取り入れて欲しいのがタイムトライアルです。
厚底以前のシューズで市民ランナーがいきなりレースペースで練習を積むと、膝が痛くなったり、筋肉疲労が残るなど、怪我につながる危険がありました。ところが厚底の進化で、市民ランナーでも強度の高い練習を積める時代になったのです。そのうえカーボンプレートなどのおかげで、スピードをしっかり出すこともできます。