箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根制覇へ視界良好「圧勝でした」駒澤大が出雲駅伝を全区間2位以内で優勝、エース田澤は「これまでは自分に頼る試合が多かった。でも…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2022/10/13 17:25
レース後にチームメイトと談笑する田澤廉。1年からエースとして話題を集めた田澤ももう4年生。最後の箱根での優勝と3冠制覇を目指す
「3区の田澤が終わった時点で、今回は行けそうだなって思いました」
大八木弘明監督はレース後にそう語ったが、それは田澤がレースを決めるということではなく、田澤のところが最大の不安要素だったという意味だ。「大エースが?」と思うかもしれないが、田澤は1週間前に胃腸炎を患い、2日間、寝込んでいた。お腹を下して下痢がつづき、予定していたアンカーを早々に諦め、2区か3区の二択になった。その際、田澤はエースの責任を果たすべく自ら「3区でいく」と監督に告げた。その結果、2区に佐藤が入り、アンカーの6区には鈴木が入った。
この区間オーダーが完全にハマった。
戦前、もはや当日変更の余地なしのベストメンバーを公表した。田澤の体調が心配だったにせよ、駆け引きなしで出雲に臨んでいった。そして、そのメンバー全員が、監督の期待に応え、実力通りの力を発揮した。力を発揮するのは簡単そうに見えるが、持っている力の100%を本番で出すのは容易ではない。また、駅伝は一つのブレーキでレースが壊れてしまうチームスポーツだ。それが今回、全員2位以内という結果からも選手が力を発揮し、終始、安定したレース展開を見せたことが分かる。
本物の強さを感じた3つのポイント
この優勝から今季の駒澤大に、本物の強さを感じた3つのポイントがある。
1つ目は3冠レースの初戦、出雲駅伝を主力が故障で外れることなく、戦えたということだ。主将の山野は、勝因について、冷静にこう語る。
「ひとりひとりが絶対に勝つという気持ちを強く持っていたことはすごく重要ですが、勝利に関しては全員が故障なく、走らないといけないメンバーが走れたことが今回一番大きいと思います」
出雲駅伝の区間エントリーは、春から調子がいいメンバーが顔を揃えていた。唯一、鈴木だけは前回の箱根駅伝で左大腿部の疲労骨折、夏前に右の大腿部の骨折のためにトラックシーズンはほとんど走れなかった。自信を失いかけ、「陸上人生で体験したことがない辛い期間だった」と本人が語るように、リハビリ期間は気持ちが落ち込み、苦しむことが多かった。だが、夏合宿で距離を踏み、徐々に田澤がいるグループでの練習もこなせるようになった。
大八木監督が鈴木の起用について、こう明かした。