箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根制覇へ視界良好「圧勝でした」駒澤大が出雲駅伝を全区間2位以内で優勝、エース田澤は「これまでは自分に頼る試合が多かった。でも…」
posted2022/10/13 17:25
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Nanae Suzuki
その眼には涙が浮かんでいた。
チームメイトが「芽吹、芽吹」と声を上げている。鈴木芽吹(3年)は、周囲の歓声と仲間たちの声に迎えられ、右手を挙げてフィニッシュテープを切った。
涙がこぼれ落ち、目頭を押さえる。
「やった、やった!」
田澤廉(4年)たちの笑みがこぼれた。駒澤大は、9年ぶり4度目、大会新記録で出雲駅伝の優勝を決めた。
「圧勝でした」
キャプテンの山野力の表情に笑顔が広がった。
外さない安定感のある走りを見せ続ける花尾恭輔(3年)が1区を2位、トップの中央大と9秒差で2区の佐藤圭汰(1年)に襷を渡した。佐藤は、わずか1キロで中央大の千守倫央(4年)をとらえ、トップに躍り出た。そこからは盤石のリレーだった。3区の田澤が2位青学大に20秒の差をつけ、4区の山野が2位の国学院大に33秒の差をつけ、さらに引き離す。5区の安原太陽は区間賞、アンカーの鈴木も区間賞の走りで全区間すべて2位以内、大会新記録達成と、村山謙太らを擁し、全区間で2位以内、そして大会記録を更新した9年前の優勝の再現のような強さを見せたのである。
3区の田澤が終わった時点で、今回は行けそうだな
レースのポイントは、1区にあった。
「1区の花尾がMVP」と鈴木が語った通り、花尾の好走が流れを作った。吉居大和(中央大3年)が前回の箱根駅伝同様にスタートから1キロ2分37秒というハイペースで飛ばしたが、花尾は青学大や国学大、順大とともに集団を作り、力を溜めて走っていた。後半、残り1.5キロの地点、吉居のペースが落ちたのを見た花尾が集団から抜け出し、差を詰めて最終的に9秒差で佐藤に襷を繋いだ。ここで前が見える位置で襷を渡せたことが佐藤の逆転劇につながった。「前が見えたので行けると思いました」と佐藤は語ったが、ルーキーの好走をアシストしたのは花尾の走りだったのだ。