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プロ野球スカウト「3位以降はグチャグチャになる」…今年のドラフトはなぜ「不作」なのか? それでも悲観しなくていい理由
posted2022/10/13 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
BUNGEISHUNJU
プロ野球新人選択会議(ドラフト会議)が10月20日に行われる。
学生に提出が義務付けられている「プロ志望届」が6日に締め切られ、高校生は154人、大学生は187人がプロ入りを志望。いよいよ当日を迎えるだけになった。
スカウト「3位以降はグチャグチャになる」
高校生は今夏の甲子園を沸かせた浅野翔吾(高松商)や甲子園に3度出場した山田陽翔(近江)、大阪桐蔭の豪球右腕・川原嗣貴(しき)などが順当に提出。大学生は根尾昂(中日)、吉田輝星(日本ハム)、藤原恭大(ロッテ)、小園海斗(広島)ら「2018年黄金世代」の同期がドラフトイヤーを迎える。
そんな話題性がありながら、今年のドラフトは直前になっても前向きな言葉が聞こえてこない。というのも、今年はかつてないほど「目玉不在」というのがもっぱらの評判なのだ。
「3位以降はグチャグチャになるだろうね。こんな選手が上位? というくらいの繰り上げ指名があってもおかしくない」
そう語ったのはパ・リーグのさるスカウト部長だ。
実際、田澤純一が直接メジャー挑戦を表明し、同じく「不作」といわれた2008年以来の迫力不足の感は否めない。しかし、ここ数年の球界の状況を踏まえると、今年のドラフトが「目玉不在」「不作」となってしまうのは致し方ないことともいえる。
というのも、今なお完全に終息しない「新型コロナウイルス」の影響が拭い去れないからだ。
筆者は新型コロナウイルスが国内に蔓延した20年当時、「自粛で練習が減ったら球速アップ? この夏、高校野球で起きている事。」というコラムをNumber Webで配信した。
かつて日本の野球界では、投手の登板過多や過酷な練習が散見されたが、コロナ禍によって練習が制限され、必然的に過度な登板・練習がなくなった。それが結果として投手の育成を後押ししている、という切り口だった。
コロナ禍で「アピールの場」が減少
コロナが選手のプレーする機会を奪ったのは紛れもない事実だ。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発令され、全国の野球現場がコロナに敏感になった。
高校野球では、県によって対策は異なったものの、練習試合の数が減り、練習自体の自粛も相次いだ。事実、今年のセンバツに出場した鳴門は、大会前に練習試合を1試合も経ずに、大阪桐蔭と初戦を戦った。いわば“ぶっつけ本番”で臨むという事態だった。