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プロ野球スカウト「3位以降はグチャグチャになる」…今年のドラフトはなぜ「不作」なのか? それでも悲観しなくていい理由
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/10/13 17:00
ここ数年の球界の状況を踏まえると、今年のドラフトが「目玉不足」「不作」となってしまうのは致し方ないことともいえる
大学野球でも、リーグ戦前にチーム内でコロナウイルスが流行り、開幕直前まで投手陣の目処が立たずに苦労したチームもあった。
高校生や大学生といった育成年代の選手たちにとって、試合経験の損失は極めて大きい。「ためし」「あい」と漢字で書く「試合」は選手たちにとって貴重な経験になる。
試合で勝てば自信がつき、負ければ課題を提示してくれる。自分に足りないものが分かり、その後の練習のテーマができる。取り組んできたことの成果を“発表”する試合によって「手応え」や「反省」を得ることができるのだ。
その試合がコロナの影響で実施できない。ルール上、練習試合は実施可能とされるも、部内の感染、濃厚接触によって突如、試合中止になったり、部活動停止になったりすることも少なくなかった。
つまり、コロナ以前と比べれば、どの学校も積むべき体験・経験を積めないという現状があるのだ。
コロナ直撃→“少し遅れて”能力開花の選手も
それゆえ近年のドラフト候補は、秋の時点で、従来の選手に比べて経験値が足りていない可能性が高い。そう考えると「目玉不在」は至極当然の結果とも言える。とはいえ、この状況を悲観する必要はない。ドラフト時期にまだ芽を出していない大輪が土の中に眠っている状態といえるからだ。
事実、ドラフトの後に眠っていた才能を開花させた選手たちがいる。その顕著な例が、今季プロ入り2年目にして、19試合6勝7敗、防御率2.47の成績を残した中日の右腕・高橋宏斗だ。
高橋は中京大中京2年時の秋に神宮大会を制覇。エースとして150キロを超えるストレートを投げ込み、「松坂の再来」と口にするスカウトも少なくなかった。
しかし、最上級生となった2020年の甲子園は春夏中止に見舞われた。代替開催された甲子園交流試合で150キロを超えるストレートを投げ込んだ高橋だったが、そこで彼の評価が大きく高まることはなかった。実際、ドラフトでは即戦力とうたわれた早川隆久(楽天)、佐藤輝明(阪神)に指名が集中した一方、高橋は単独指名だった。
重複指名を受けるほどの評価を受けなかった高橋が、プロ2年目にして一軍で活躍している――。この事実は、高校時代は眠っていた才能が少し遅れて開花したことを意味するのではないか。