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「鳥谷敬指名の2年前に布石は打っとったんよ」岡田彰布が明かすドラフト論「『なんでこの選手を?』はウラ事情があると思っていい」
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySankei Shimbun
posted2022/10/20 06:03
阪神の監督に就任した直後の2003年秋、ドラフト前日の幹部会議に出席した岡田。この年、鳥谷敬を指名するが、実は数年前から布石が打たれていたという
ミスターの真意は謎
まさか岡田の真意を探るためにカマをかけたのか? 土壇場で方針を変更した可能性もあるが、ミスターの真意は謎である。
「ドラフトはスカウトの調査力が成否を分ける。阪神の二軍監督時代、俺はスカウト登録をして2003年の鳥谷敬の獲得に動いたけど、数年前から準備をしていたよ。鳥谷の2年前に東辰弥という早稲田大学の捕手をドラフト9巡目で獲得したのも『仲の良い先輩がいれば鳥谷が安心するだろう』という深謀遠慮。目をつけた有望選手がいる高校や大学、社会人チームとのパイプづくりをねらって、実力の低い選手でも下位で獲得するわけだよ。『なんでこの選手を?』という指名は、そういったウラ事情があると思っていい。強いチームほど、数年後を見据えた長期的な展望を持っているもんよ」
翻ってオリックス監督時代の'10年ドラフトは1位指名の入札で3度も競合。“外れの外れの外れ”で後藤駿太を獲得した。
選手全員を会場に来させて、本人がクジを引けばいい
「ああなったのはスカウトが読み間違えたせいだよ。競合覚悟で指名した1巡目の大石達也を外したのは想定内で、問題はその後の対策。山田哲人を外れ1位で考えていたけど、『本来は3位でも獲れる選手』というスカウトの言葉を信用して、競合の可能性もある伊志嶺翔大を選んだ。結果はロッテが引き当てたけど、その次の山田は抽選がないと安心していたんだよ。それがまさかのヤクルトとの競合やで。さすがに『どないなっとるんや!』とブチ切れた」
引き当てられる強運を持っていた岡田だが、引き当てる運には見放されていたのだ。
「今は高校生、大学生はプロ志望届を提出した選手を指名する取り決めがある。社会人も含めてプロ志望の選手は全員会場に来させて、競合したら球団名が書かれた封筒を箱に入れて、選手本人がクジを引けばいい。これでドラフトの理不尽さが解消されるわけではないけど、自分で選んだ結果なら外れても納得できるやろ(笑)」
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