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6球団競合、菊池雄星をクジで引き当てた西武・渡辺久信監督がしていたゲン担ぎ「紫のペンを忍ばせ、紫の下着も…」
posted2022/10/20 06:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
JIJI PRESS
競合を制して意中の選手を引き当てた強運の持ち主。くじ運に見放されて天を仰いだ指揮官。そして、まさかのハプニングで会場をザワつかせた当人……。その手で封筒を掴み、悲喜こもごものドラマを生んだ4人の監督が、ドラフト会議当時の裏側を語る。
第1回は渡辺久信(西武元監督)/#2真中満、#3東尾修、#4岡田彰布の全4回(初出は2018年10月11日発売Number 963号『<運命の日の明暗> 監督、クジを引く」』、肩書は全て当時のまま)
第1回は渡辺久信(西武元監督)/#2真中満、#3東尾修、#4岡田彰布の全4回(初出は2018年10月11日発売Number 963号『<運命の日の明暗> 監督、クジを引く」』、肩書は全て当時のまま)
迷いはなかった。
右手を抽選箱の中に差し入れ、6枚あった封筒のうち、最初に指先に触れたものをつまみ上げた。西武のシニアディレクターで、当時監督を務めていた渡辺久信が振り返る。
「あのときは万全の準備をして行ったからね。(当たると)信じてた」
2009年10月29日、グランドプリンスホテル新高輪。この年のドラフト会議の目玉は花巻東の菊池雄星だった。貴重な大型左腕とあって、6球団が1位指名。いちばん最初に引いた西武が交渉権を獲得した。
紫のペンをしのばせ、紫の下着をはいた
前夜、編成会議を終え、スタッフ一同で食事をするとき、渡辺はこう提案した。
「雄星を育てた岩手の土地の水と米でつくった酒で乾杯した方がいいよな」
スタッフの1人が急きょ、岩手の銘酒「南部美人」を買いに走った。花巻東のチームカラーは紫だ。当日は、それにちなんでスーツの裏ポケットに紫のペンをしのばせ、紫の下着をはいた。さらには、担当スカウトを新花巻駅に待機させてもいた。
「当たったら、すぐ学校にあいさつに行ってくれと。それだけに思いが強かった」
万全の準備をしたのには理由があった。2年前、監督に就任した直後のドラフト会議では、何の準備もせずに臨んだ。すると、1位指名を外し、続く外れ1位指名でも外すという2連敗を喫する。運は呼び込まなければならないのだと痛感した。