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「横浜以外なら社会人」松坂大輔と極秘交渉、西武・東尾修が娘・理子の部屋で手に入れていた“決め球”「このボール、持ってみな」

posted2022/10/20 06:02

 
「横浜以外なら社会人」松坂大輔と極秘交渉、西武・東尾修が娘・理子の部屋で手に入れていた“決め球”「このボール、持ってみな」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

松坂大輔はもともと横浜ベイスターズを意中の球団としていたが、東尾の極秘交渉で西武入りが決定。“決め球”となったのは…

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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 競合を制して意中の選手を引き当てた強運の持ち主。くじ運に見放されて天を仰いだ指揮官。そして、まさかのハプニングで会場をザワつかせた当人……。その手で封筒を掴み、悲喜こもごものドラマを生んだ4人の元監督が、プロ野球ドラフト会議の裏側を語る。第3回は東尾修(西武元監督)/#1渡辺久信#2真中満#4岡田彰布の全4回(初出は2018年10月11日発売Number 963号『<運命の日の明暗> 監督、クジを引く」』、肩書は全て当時のまま)

 1998年11月20日、松坂大輔の名前は3度呼ばれた。

 わずか3カ月前、横浜高校を甲子園春夏連覇に導いた18歳はドラフトの目玉。しかし、同世代の豊富な逸材と逆指名制度の存在、さらに「横浜以外なら社会人に進む」という松坂本人の意思によって、指名の一極集中には至らなかった。西武の監督を務めていた東尾修は胸をなでおろした。

「6球団、ひょっとしたら8球団が指名してくるかもしれない、なんて話もありましたから。フタを開けてみたら3球団ということで、ほっとしたところはある」

松坂「いや、まあ……外れたなっていう感じで」

 東尾はドラフト戦略をフロント任せにせず、日ごろからスカウトと対話の場を持ち、情報共有を欠かさなかった。甲子園で完成度の高い投球を見せる松坂の獲得に乗り出すことは、競合や入団拒否などあらゆる可能性を差し引いても揺るぎない総意だった。

 日本ハムの上田利治、西武の東尾、横浜の権藤博。3人の監督が順に抽選箱に右手を入れる。“当たり”を引いたのは東尾だ。

 横浜高校の記者会見場で待機していた松坂は、抽選の瞬間を微妙な苦笑いとともに見つめていた。現場のアナウンサーがその表情の理由を尋ねる。

「いや、まあ……外れたなっていう感じで」

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