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ボクシング界はメイウェザーvs.朝倉未来をどう見たのか?「避け方がぎこちなくなった」「あれがボクシングだと思われるのはつらい」
posted2022/09/29 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
9月25日にさいたまスーパーアリーナで開催された格闘技イベント『超RIZIN』。ボクシングの元パウンド・フォー・パウンド・キング、フロイド・メイウェザー・ジュニアと総合格闘家の朝倉未来によるエキシビションマッチは、試合後もさまざまな意見がネット上で飛び交い、大きなインパクトを格闘技ファンに与えた。
そうした中、NumberWeb編集部から私に届いたリクエストは「ボクシングの玄人はどう見たのか?」というもの。早速、メイウェザーの“古巣”でもあるボクシング界の声を拾ってみると――。
「動きに“角”が出てきた」メイウェザーの衰えとは
結論を最初に言ってしまうと、ボクシング関係者のメイウェザーvs.朝倉評は総じて渋い。まず登場してもらったのは試合会場で偶然つかまえた元日本チャンピオン。世界タイトルマッチの舞台に上がったこともある40代のOBだ。
「ああいうのは、僕らからしたらやっぱりうれしくはないですよね。現役の選手たちは毎日必死にトレーニングして、命をかけてリングに上がってるわけじゃないですか。メイウェザーは引退していて、たいして練習もしていない。それなのに今回の報酬は20億円とか。そりゃいい気持ちはしないですよ。需要があるから? もちろんそうですよね。メイウェザーのお金儲けがうまいと言えるんでしょうね」
実際のパフォーマンスはどう感じたのだろう。
「公開練習をネットで見たときはさすがだと感心しました。ただ、試合を見ると動きにずいぶん“角”が出てきました。避け方もだいぶぎこちなくなった。朝倉選手を倒すのに必死だったという印象です。でも、最後の世界タイトルマッチになったアンドレ・ベルト戦から数えるともう7年(2017年のコナー・マクレガー戦は公式戦だがエキシビションみたいなもの)。しかも45歳。衰えるのは当然だと思います」
続いて現役のボクサーにも登場してもらおう。日本タイトルを獲得したこともある30代のベテラン選手は、やはり顔を曇らせるのだった。
「僕的にはちょっといい気持ちにはなれない。やっぱりリングっていうのは現役の選手が命をかけて戦う場所だと思っているので。なんて言うか、一般の人にあれがボクシングだと思われてしまうのはちょっとつらい気持ちがあります」