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「相手は真剣、自分にとっては遊び」メイウェザーは朝倉未来に対してどこまで“本気”だったのか? 土下座まで飛び出した狂騒曲の顛末
posted2022/10/04 11:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.朝倉未来の余波が世間を賑わしている。政治団体『ごぼうの党』の奥野卓志党首が、メイウェザーに渡すはずの花束を目の前でわざと落とすという暴挙を冒したことで、この一戦の話題は坂を転がる雪だるまのように膨らむばかり。9月30日の会見では、RIZINの榊原信行CEOが深々と土下座する事態にまで発展した。
花束を落とした理由について、奥野党首は「メイウェザーの過去の行ない」だと語っているが、4年前に那須川天心とエキシビションマッチで闘ったときと比べると、今回の彼は限りなくベビーフェイスに近かった。
公開練習に1時間以上も遅れ、決戦2日前の共同インタビューに応じないなどの“らしいトラブル”は起こしたものの、前回のように会場入りを大幅に遅らせ、すでにバンテージを巻いていた那須川に巻き直しを要求するといった度を越えた問題行動はなかった。瞬時に場の空気を読んだかのように奥野党首が落とした花束を拾ったことで、メイウェザーのキャラクターは「いい人」になったといってもオーバーではない。メイウェザーの鼻を明かそうとした奥野党首のパフォーマンスは、思わぬ逆効果を生んでしまったということだ。
引退後のボクシングはあくまで「エンターテイメント」
決戦前日の夜に実現した記者会見で、メイウェザーは自分が世界を股にかけたエキシビションマッチツアーを続けている理由についても長々と発言した。
「現役でプロボクサーとして活動していたとき、私は日本やドバイで闘う機会はありませんでした。本音を言えば世界中を回りながら闘いたかったけど、上がるリングはラスベガスだったり、アメリカの他の(ボクシングが盛んな)街ばかり。自分のファンは世界中にいるので、以前から彼らに自分のパフォーマンスを見せたいという思いは強く抱いていました」
ここで留意すべきは、メイウェザーが自分の口から現在は引退した身であることを明言している点だろう。同時に彼は「引退しても、まだ動けるフロイド・メイウェザーを見てもらいたい」とも思っているのだ。
「自分のエンターテイメントを生で見てもらいたい」
メイウェザーにとってエキシビションによるワールドツアーは、第2の人生の幕開けだった。現役時代のボクシングがファイトだとするならば、現在のそれはあくまでも「エンターテイメント」だと理解するのが正しい。