プロ野球PRESSBACK NUMBER
「村上宗隆選手の本塁打で度肝を抜かれたのは…」「一見矛盾してる動きが」元首位打者・鉄平も驚く“打率+威圧感アップ”のポイント
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/09/15 11:00
55本塁打を放ち、三冠王も視野に入る村上宗隆。打撃タイトルホルダー視点で見るすごさとは?
今シーズンはセンター方向へのホームランが急増している。55本のうち、センターは14本で25%を占める。逆方向のレフトにも17本。ライト方向は最多の24本だが、よりセンターに近い右中間スタンドに入る打球が多い。39本のホームランを記録した昨シーズンはセンターが4本で全体の10%、ライト方向が22本で56%。今シーズンは、いかに広角へ打ち分けられているかを数字が明確に示している。
楽天・松井から放ったホームランは、今シーズンの村上を象徴する1本だった。
鉄平氏は「村上選手は球を引き付けているのに引っ張れる。一見矛盾してるような動きができるのが、打率を残せている理由です。いつでも打てるが、あえて引き付けている印象です。軸がぶれず、スイングがコンパクトで速くて強いからこそ、確実性と長打力の両立ができています」と語る。
鉄平氏はシーズンを通して高打率を維持し、タイトルを獲る難しさを知っている。だからこそ、確実性という面だけを見ても、村上のすごみを感じている。相手バッテリーに警戒されるほど、内角への配球が多くなる。鉄平氏は「相手捕手が僕に隠れるくらい内角にミットを構えていた時もありました」と回想する。
内角を厳しく攻められると、打者の視界は内角に寄る。鉄平氏は「人間は見える範囲が決まっています。いい打者だからといって視界が広いわけではありません。全ての方向は見えないので、内角に視界を開けば、外角は死角になります」と解説する。内角のボール球に手を出してしまうのは、意識が内角に向き過ぎている状態だという。この時に、死角になっている外角へ投じられると対応は難しい。
数年前の村上は“今ほどの怖さ”を感じなかったという
実際、数年前に解説者や打撃コーチをしていた頃、鉄平氏は村上に今ほどの怖さ・威圧感がなかったと話す。
「内角に直球を見せて、外角に落ちるボールをしっかりコントロールできれば打ち取れる印象でした。浮いた球は長打にされますが、投手が投げ切れれば三振を取れると考えていました」
だが、今シーズンの村上は「いい意味で内角を意識せず打席に入っています」と指摘する。内角の甘い球は捉え、厳しい球にはつられない。視界を内角に寄せることなく打席に立っている。相手投手は内角を続けた後、満を持して外角にフォークやカーブを投げても捉えられたり、見極められたりする。村上に内角への過剰な意識や恐怖心がないため、内角の球が利いていないのだ。
もう1つ、鉄平氏が高い打率をマークする村上を評価する点がある。