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「朝練でタバコは当たり前、 カンニングも頻出」不良サッカー部が高校日本一に… 土台は高圧的な〈指示、命令、思考停止〉からの脱却
text by
加部究Kiwamu Kabe
photograph byKyodo News
posted2022/09/11 11:00
2006年のインターハイで優勝した広島観音高校
《120人いれば、選手主導のボトムアップ方式のほうが一人の監督より細かく目が行き届く。いろんな発想、イマジネーションも生まれてくる。それを大事にした方がいい》
そう確信すると、選手たちには責任を持たせて「思い切りやって来い」と送り出すようになった。チーム内では、上級生や下級生に関係なく、いつでも意見を出し合う習慣づけを心がけ、「人間力を養う」ミッションと「日本一魅力のあるチーム創り」というビジョンを共有した。
インターハイで優勝したが世間の注目は…
こうして2006年、広島観音高校サッカー部は、大きな歓喜に包まれる。8月4日から大阪で行われたインターハイで、中1日の過酷な6連戦を勝ち抜き優勝を飾るのだ。
「大会の開催中は、選手たちが宿舎でミーティングを重ね、プランを立てて戦い抜きました。メディアには『僕はベンチでコーヒーを飲んでいたら勝っちゃった』と話したくらいです。それだけ彼らを信じていました。あれがターニングポイントになりました」
しかし、《これで世の中も動くかな》という畑の予感は外れた。冬の選手権に比べてインターハイへの注目度が低かったこともあり、メディアの反応は鈍く、畑の斬新な方法は日本のスポーツ界に大きなインパクトを残すには至らなかった。<#2につづく>