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〈秀岳館だけではない高校サッカー強豪校と抑圧問題〉“監督の独裁”から選手主体になったチームは何をどう変革したのか

posted2022/05/08 17:02

 
〈秀岳館だけではない高校サッカー強豪校と抑圧問題〉“監督の独裁”から選手主体になったチームは何をどう変革したのか<Number Web> photograph by Kyodo News

秀岳館サッカー部の問題について、5日に学校側が会見を開いた

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加部究

加部究Kiwamu Kabe

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秀岳館高校の件で再び暗い影を落とす「部活における暴力・抑圧」問題。これについて長年現場を取材しているサッカーライターが、高校サッカー取材を通して得た知見を配信します(#1#2も)。

 中学生の進路選択のために、高校サッカー部OBから情報を集めて公開している「Foot luck」というWEBサイトがある。秀岳館高校卒業生の口コミは1名のみだが、それでも十分に同校の事情は伝わって来る。

「パワハラというか、指導者が偉そうにして選手に恐怖心を与えています。のびのびとサッカーを楽しめませんでした」

 後進へのメッセージは次の通りだ。

「寮での生活や学校は、色々ひどいです。同じ熊本なら他の学校でサッカーをする方が最終的には幸せかと思います」

 上意下達で染まった部活の環境は、どこも似ている。ある選手権優勝経験校で、Jアカデミーから入学した選手がその後の日常生活にも支障をきたす酷い故障に苛まれ退学したケースがあった。

 当時この高校のスタッフは全てOBで、取材をすると監督は嘘を上塗りした逃げ口上を繰り返し、連座するコーチ陣は俯いたまま沈黙を貫いていた。質問を投げかけても、監督の意に反する回答をしてしまうことが怖くて口を閉ざしている様子だった。

「理不尽に耐え抜いたからこそ」の成功者ばかりでは

 このタイプの強豪校では、選手たちもスタッフ間の徹底した上下関係を見ているので同様のヒエラルキーを継承していく。上級生は下級生の上官として振る舞い、部の頂点で安座する裸の王様には一切異論が出ない。

 だから不祥事が発覚すると、世情とあまりに乖離した的外れな対応が飛び出してくる。まさに秀岳館はその典型で、生徒の言葉で突然切れたコーチはわざわざ相手に背中を向けさせ、被害者が先行して謝罪動画を出す不自然さが、どんな疑惑を招くのかを想像する社会性も持ち合せていない。

 まさか日本で、ウクライナに攻め込むロシアの実質的な独裁体制を讃える声は出て来ないはずだ。しかしそれと酷似する恐怖政治の部活を最善だと信じ、そこで鍛えて欲しいと願う親、それを当然視するファン、さらにその中に入って勝ちたいと願う子供たちは、依然として相当数存在する。

 これまでは冒頭のようにOBの声が漏れて来ることはなかったから「理不尽に耐え抜いたからこそ今がある」と伝承する成功者ばかりが連なり、それは紛れもなく日本スポーツ界の宿痾と化している。

インハイ制覇の広島観音、選手権ベスト8の堀越も以前は

 実は選手主体のボトムアップ方式で好転した堀越高校や、その原点を築いた畑喜美夫監督が牽引した広島観音高校も、かつては同じ潮流に浸っていた。

【次ページ】 荒れた生徒を規律で締め付け、厳罰も辞さない構えだった

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