- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「ヤクルトはすでに目一杯、落ちてくる可能性は…ある」10ゲーム差から逆転V、2011年落合ドラゴンズ“扇の要”谷繁元信40歳が狙いを定めた「4連戦」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTamon Matsuzono
posted2022/09/22 06:02
落合中日の「扇の要」としてチームを支えた谷繁元信。2011年はケガがあり、戦列を離れリハビリをしながら優勝を目指した
監督・落合博満の哲学がそのまま表れたチーム
もうひとつはメンバーの“顔”だった。この状況においてもだれも俯いてはいなかったのだ。
和田一浩、井端弘和、荒木雅博、森野将彦……、この数年顔ぶれの変わらないレギュラーたちはいつも通り淡々と仕事をしていた。勝っても笑わず、負けても俯かず。追い上げても昂らず、離されても消沈しない。良くも悪くも感情で野球をやらないチームだった。
それは監督・落合博満の哲学がそのまま表れたものだった。
落合はよく選手たちに言った。
「球団のためとか監督のためとか、他の誰かのために野球をやるな。自分のために家族のために野球をやれ。勝たせるのは俺の仕事だ。好き嫌いはしない。良い者を使う。だから自分の成績だけを考えてやれ」
誰かに与えたり、与えられたりする力を落合は信用しなかった。自分のために今を出し尽くすような一投一打を求めた。
選手と行動を共にすることはなく、ゲーム中は一切の感情を出さなかった。
頑張れとか、期待しているとか、頼むぞという類の言葉を用いなかった。
<後編へ続く/#2>