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〈沢村賞候補の成績比較〉山本由伸パ初の2年連続が濃厚だが… サイ・ヤング賞と同じく「指標見直し」「両リーグ1人ずつ選出」しては?
posted2022/09/21 17:02
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
沢村栄治賞(沢村賞)はNPBで年間通して最も優秀な先発投手に与えられる賞だ。MLBのサイ・ヤング賞と比較されるが、サイ・ヤング賞はア・ナ両リーグで1人ずつ選ばれるのに対し、沢村賞は両リーグで1人だけである。
またサイ・ヤング賞は救援投手も選考の対象となるが沢村賞は先発投手だけ。ともに大投手の名前にちなんだ賞だが、沢村賞は1947年に制定され、1956年に制定されたサイ・ヤング賞よりも古い。
沢村賞7つの指標+QS率を含めて徹底比較
今季の沢村賞候補の成績を見ていこう(※成績は9月20日時点)。
沢村賞には登板数、完投試合数、勝利数、勝率、投球回数、奪三振数、防御率という7つの指標がある。また近年はQS数(Quality Start)も参考にされるが、MLBのQS(6回以上投げて自責点3以下)とは異なり沢村賞の基準としてのQS数は7回以上投げて自責点3以下となっている。
<登板数 25試合以上>
1森下暢仁(広)25
2高橋光成(西)25
3山本由伸(オ)24
3伊藤大海(日)24
5西勇輝(神)23
5青柳晃洋(神)23
5戸郷翔征(巨)23
5小川泰弘(ヤ)23
5宮城大弥(オ)23
5田中将大(楽)23
基準をクリアしているのは現時点では広島の森下だけ。ただ山本、伊藤はあと1回は登板機会があると思われるのでクリアしそうだ。
<完投試合数 - 10試合以上>
1伊藤将司(神)6
2山本由伸(オ)4
2青柳晃洋(神)4
2大野雄大(中)4
5森下暢仁(広)3
5戸郷翔征(巨)3
5柳裕也(中)3
5加藤貴之(日)3
5今永昇太(De)3
5大瀬良大地(広)3
先発、救援の分業が進んだ現在では、この数字をクリアするのは難しい。近年では2020年の中日・大野、2018年の巨人・菅野が10完投し、ともに沢村賞を受賞している。
<勝利数 - 15勝以上>
1山本由伸(オ)14
2青柳晃洋(神)12
2戸郷翔征(巨)12
4宮城大弥(オ)11
4大貫晋一(De)11
4高橋光成(西)11
オリックスの山本はこの数字をクリアしそうだが、残り試合数を踏まえると青柳以下は難しそうだ。
山本由伸や青柳、佐々木朗希らがクリアした項目は何個?
<勝率 - 6割以上>
1青柳晃洋(神).750(12勝4敗)
2山本由伸(オ).737(14勝5敗)
3戸郷翔征(巨).667(12勝6敗)
4宮城大弥(オ).611(11勝7敗)
4大貫晋一(De).611(11勝7敗)
NPBで表彰対象となる「勝率」は「13勝以上」となっている。タイトルとしては実質的に青柳、山本、戸郷の3人だけに獲得の可能性がある。沢村賞の基準としては、山本はあと1勝すれば青柳に追いつく計算になる。