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ドラフト候補にありがちな「〇〇二世」「〇〇の再来」は禁句にしてきたが…「こりゃ、小園だなぁ」DeNAドラ1によく似た高校生投手を見つけた
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/06/14 17:00
昨年ドラフト1位でDeNA入りした小園健太。写真は入団交渉を終え、三浦大輔監督と記念撮影(昨年11月)
昨年の横浜DeNAドラフト1位・市立和歌山高・小園健太投手。
去年の今ごろですでに185cm90kgほどもあった小園健太よりはひと回りコンパクトではあるが、投手として全く過不足を感じない均整抜群の体躯。
体重を増やすために、無理やり太らせた体じゃない。メリハリの利いたユニフォーム姿のシルエットに、バランスのよい筋肉量の発達が見てとれる。
軟式出身者特有の伸びやかで柔軟な四肢の躍動。左膝が胸まで上がっても、上体が前傾も後傾もせずに、初動が生んだパワーを受け止めて、マウンドの傾斜にスピードをもらった体重移動に、連動をつなげていく。
時計の文字盤で「11時」の角度から長い右腕がしなやかに振り下ろされる。
軸足(右足)がパーンとプレートを蹴り上げて、全身で跳ねるようなフィニッシュ。まず、ここが「小園」だ。
一瞬、全身で跳ね上がったフィニッシュがバラつかず、すぐに捕球体勢に移れる。そこが、さらに「小園」だ。ピッチャー返しの打球にも、送りバントにも、隙がない。
「〇〇二世」「〇〇の再来」の表現は使ったことがないが…
試合開始の初球を、「142キロ」から入った。
見せてやる!の気負いは感じられない。いつも、こんなスタートなんですよ……みたいな、日常感のあるほどよい力感。
変な力みが生じないのは、センター方向に無理なくなされたテークバックのせいだ。理にかなった動作だから、ことさら力を必要としない。なので、適度に脱力までできて、そのぶん、腕の振りからフィニッシュで存分に力を瞬発できている。
いいフォームだ! これなら、努力の量と能力アップが正比例するはずだ。
最初の2イニング、天理高の強打者6人がすべて差し込まれた打球で打ちとられる。
打順ふた回り目、140キロ前半でも甘く入った速球は捉えられ始める。それでも、プロ注目の2番・戸井零士遊撃手(3年・180cm85kg・右投右打)や4番・内藤大翔三塁手(3年・176cm84kg・右投右打)には、果敢に速球勝負を挑んで向かっていっては、ガツンとやられている姿を見ていると、「いい勉強させてもらってるなぁ……」と、むしろ、伸びしろしか感じない。
変化球を混ぜ始めた4回あたりから、急激に三振奪取率が上がる。
タテのスライダー、チェンジアップで、下位打線から3者連続三振を奪ったかと思うと、今度はフォークボールだろうか……落差と鋭さを兼備したタテの変化で、天理高クリーンアップから再び3者連続三振だ。
スライダーとフォークには、どうやら、カウント稼ぎ用と勝負球用のふた通りの変化があるようで、カットボールも変化点が打者に近いから、振り始めてから動いて打者を悩ませる。
まっすぐのスピードだけじゃない。変化球の使い手でもあり、宿敵・智弁和歌山にも臆せず立ち向かっていったファイティング・スピリット……そうした「小園的要素」も持ち合わせている星城高・田島善信。
ストライクゾーンはすべてフルスイングで攻めていって、引き腕(左腕)を目一杯大きく使ったスイングから、タテのカーブを右中間のいちばん深い所まで運んでいったバッティングセンスにいたるまで、どうしても「コンパクト小園」に見えて仕方なかった。
「〇〇二世」とか「〇〇の再来」という表現はしたことがない。