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涙の甲子園デビューから3カ月…“背番号17”佐々木麟太郎の今 すでに高校通算69発も、本人は「まだまだ」と猛省する理由
posted2022/06/13 11:10
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
新型コロナウイルスによるパンデミックで、高校野球の現場取材も制限されるようになった。
これまでなら監督や責任教師から許可を得れば、常識の範囲内で自分たちが希望する選手の話を聞けたが、今ではほとんどの地区で「監督および指名選手数名」となっている。
東北地区ならば2名。記者投票で指名選手が決まるが、ほぼ間違いなく結果を出した選手か試合のポイントとなった選手が呼ばれる。
初戦敗退の東北大会。麟太郎もチャンスで…
東北大会初戦。東北に敗れた花巻東で指名されたひとり目は、キャプテンの田代旭。チームの代表者として無難な選出であるが、もうひとりはノーヒットに終わった佐々木麟太郎だった。地元の岩手や東北のみならず、東京や大阪から駆け付けたメディアも彼に票を投じたわけだが、それだけ佐々木への関心度が高く、彼の肉声を聞きたい高校野球ファンが多いという証左でもある。
呼ばれた佐々木は、俯くことなく、前を見つめていた。しかし、声のトーンは低い。
「チームとしても自分としても、完璧な実力不足でした」
この時点で高校通算ホームランが69本の佐々木は、東北投手陣の前に屈した。1点を追う6回には、1アウト三塁と、一発が飛び出せば逆転の場面で打席を迎えたが空振り三振。「勝負を左右したと言っていいくらいポイントとなった場面で三振してしまい、情けないというか、勝負強さがとにかくなかった」と、猛省の言葉を並べるほど悔やんだ。
佐々木洋監督「まだ全然よくないな、と」
昨秋の明治神宮大会で3試合2ホーマーと、衝撃の全国デビューを飾り、「新怪物」の称号を得た2年生スラッガーの今は、通算ホームラン数からも順調にキャリアを歩めているように見えるかもしれない。
ただし、実際はどうか。
佐々木の父であり、花巻東の監督でもある洋は、渋い表情で麟太郎をこう評価する。
「まだ全然よくないな、と思います。見ていて、体の状態も動きも秋より落ちている」
昨年末に両肩を手術した影響もあるのだろう。現時点での麟太郎がトップフォームではないことが窺えるが、これだけが彼自身を戒め、自己肯定感を高められない要素ではない。
麟太郎はレベルの基準値を高めた。だからこそ、打とうが打つまいが現状に満足したくないのではないか。
そのことを裏付ける一端となるのが、センバツでの市和歌山戦だ。