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80年代の間違った成功体験が生んだ“部活の強制加入ルール”…ある現役教師が明かす「意義はあるのでしょうか?」校長の驚きの回答

posted2022/05/30 06:00

 
80年代の間違った成功体験が生んだ“部活の強制加入ルール”…ある現役教師が明かす「意義はあるのでしょうか?」校長の驚きの回答<Number Web> photograph by Getty Images

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中小路徹

中小路徹Nakakoji Toru

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 部活動の在り方を取材してきた筆者のツイッターに、一人の中学教諭からアクセスがあった。「部活の強制に疑問を抱いています。マスコミの力が必要です」。話を聞かせてもらうと、有無を言わせない強制の実情があった。

ある中学校で実施されている「強制加入」

 この教諭は、東北のある公立中学校に勤めている。仮にAさんとしておく。

 この新年度。職員室でAさんにとって、怒りがこみ上げる出来事があった。

 この学校では、部活動に関する規定に「希望する部で全員が活動する」という原則が掲げられている。いわゆる「強制加入」だ。

 校外の地域クラブでスポーツをする生徒については、必ずしも部で活動しなくていい配慮はなされているが、それ以外の生徒は、実際に全員が何らかの部に加入している。

 また、教員も全員顧問制が敷かれ、何らかの部の顧問や副顧問が割り当てられている。

 Aさんはかねて、「部活動の加入を強制することはおかしい」と考えていた。

なぜ「部活の強制加入」は問題なのか?

 国が定める学習指導要領では、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と位置づけられている。入るも入らないも、生徒の自由であることが、法規としての性質を持つ学習指導要領に記されているのだ。強制加入はこれに矛盾する。

 また、Aさんの考えには、スポーツ庁もお墨付きを与えている格好だ。

 2018年、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」がつくられた際、スポーツ庁はその解釈についてのQ&Aを出している。その中で、「部活動は生徒全員が参加しないといけないのですか」という問いに対して、「各学校においては、生徒の自主性を尊重し、部活動への参加を強いることがないよう、留意しなければなりません」という回答が書かれている。

 Aさんの学校では、「強制はやめてほしい」という生徒からの投書が、多くはないものの寄せられたことがある。Aさん自身が生徒から「どこにも入りたくないんですけど……」という相談を、内々に受けることもあった。

 地域クラブで活動していなくても、放課後の過ごし方は個々が決めていいはずだ。結果、この学校では特定の文化部に「幽霊部員」が集まる構図ができた。実を伴わない、表向きのみの全員加入になっている。

 Aさんと同じく、疑問を持つ同僚は少なくなかった。昨年度から、管理職と話し合いの場が持たれていた。

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