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80年代の間違った成功体験が生んだ“部活の強制加入ルール”…ある現役教師が明かす「意義はあるのでしょうか?」校長の驚きの回答
text by
中小路徹Nakakoji Toru
photograph byGetty Images
posted2022/05/30 06:00
写真はイメージです。本文とは関係ありません
そして、新年度。
「今年度も加入を強制します。校長判断です」
職員会議で校長からそんな表明がなされた。
「なぜ強制したいのですか」
「その意義はどういったところにあるのでしょうか」
教員たちの問いかけに、校長は何も語らず、にべもない態度だったそうだ。
全国の公立中の32.5%が「全員加入制」の現実
Aさんが強制加入に強く抵抗感を覚える理由には、「誰かに何かを強制することを、生徒に当たり前だと思ってほしくない」という教育的な信念がある。
「強制は一歩間違えれば、人権侵害になり得ます。校則も含め、誰かに何かを強制することを、軽く考えてはいけないのではないでしょうか」
放課後の過ごし方まで拘束する理由を語れず、権限のみを使う姿勢にも、Aさんは失望する。
「何となくの肌感覚の運用なのでしょう。確かに、子どもたちから声がたくさんあがっているわけではありません。でも、子どもが言わなければそのままでいいのでしょうか。生徒の立場は弱いもの。言いやすい雰囲気をつくっているわけでもない。大人側の都合のいい論理だと思います」
部活動の強制加入は、全国的な問題だ。2017年にスポーツ庁が集計した調査では、全国の公立中の32.5%が、全員加入制をとっていた。
今年3月には、若者の声が政策に反映されることを目指す日本若者協議会が、9千人分近い賛同の署名とともに、「部活動強制加入」撤廃に関する要望書をスポーツ庁に出した。
「部活動こそが健全育成につながる」という固定観念
なぜ、法的根拠の薄い部活動の強制加入のしきたりが、全国津々浦々に残るのか。
背景の一つは、「部活動こそが健全育成につながる」という固定観念だ。
「学校外の地域を含め、大人が生徒を学校に囲い込むことを求めています」
そう話すのは、日本若者協議会の代表理事、室橋祐貴さんだ。