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「一番のライバル」2連敗中の相澤晃が伊藤達彦を置き去りに…それでも男子1万で「世界陸上内定者」がゼロだった理由
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2022/05/12 17:01
オレゴン世界陸上の代表選考会も兼ねた日本選手権。男子10000mにはともに東京五輪を走り、大学時代からしのぎを削ってきた相澤晃と伊藤達彦の姿があった
なお、複数名の参加標準記録突破者が出た場合、代表内定の優先順位は「日本選手権の順位」→「参加標準記録有効期限内の記録」→「2022年度に開催される国内主要競技会の成績」の順となっている。したがって、日本選手権覇者の相澤、2位の伊藤、3位の市田孝(旭化成)が優位な状況にあり、参加標準記録をクリアすれば代表となる。
今後、参加標準記録突破者が3人に満たなかった場合、すでに記録を突破している田澤が代表に選出される可能性が高い。ただ、今回は参加標準記録に届かなかったものの、相澤は終盤の走りに手応えがあったようだ。
「ラスト1マイル4分じゃないと、世界では通用しない」
「後半しっかり先頭に付いていって、最後まで押し切れたのは、次の大会で標準記録を切るための好材料になりました」
もっとも、この終盤の走りこそが、17位に終わった昨年の東京五輪で、まざまざと実感させられた世界との差でもあったが……。
「テレビで見て分かってはいましたが、実際にレースを走ってみて、ラスト1マイル(4周)を4分に近いタイムで走れないと、世界では通用しない。仮に、そこまでに余裕があったとしても、ラスト1マイルで置いていかれたと思う。どんなにきつい状態でも、1マイルを4分で走れる力を身につけないといけないなと、オリンピックで改めて感じました」
今回、手元の計測では、ラスト4周を4分15秒、ラスト1000mを2分36秒でカバーしている。日本記録を樹立した時(ラスト4周:4分17秒、ラスト1000m:2分37秒)よりも少しだけ速かった。このラスト4周で、伊藤らにも決定的な差を付けた。
手応えがあったとはいえ、相澤が求めるラスト1マイルのタイムにはまだまだ遠い。相澤はすでに2年後のパリ五輪に視線を向けており、夏以降はスピードの強化に取り組んでいくつもりだという。
その前にオレゴン世界陸上がある。出場することができれば、その経験はパリ五輪に向けても、血となり肉となるにちがいない。