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田澤廉「自分の弱さが出た」、三浦龍司「タイムはもっと上を」…世陸を目指す“大学トップランナー”の明暗はなぜ分かれた?
posted2022/05/10 06:02
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Yuki Suenaga
日本長距離界の将来のエースであり、前回の箱根駅伝でともに2区を駆けたふたりが対照的なレースを見せた。日本陸上選手権10000mに出場した田澤廉(駒澤大)は終盤に崩れ、28分06秒34で10位。その翌日、セイコーゴールデングランプリ陸上の3000m障害に出場した三浦龍司(順天堂大)は、終始余裕のあるレース運びを見せ、ラストスパートで後続をちぎって優勝した。
レース後の二人の表情は、KO勝利とKO負けぐらいの差があった。
田澤は、ミックスゾーンの柵に体を預け、呼吸は乱れたままだった。大会関係者に椅子に座ってくださいと勧められるほどのダメージで、その姿は痛々しかった。
即内定は“ほぼ確実”だったはず…「自分の弱さが出た」
田澤はすでにオレゴン世界陸上選手権の参加標準記録(27分28秒)を突破しており、10000mで3位以内に入れば即内定だった。実力的にも、さほど難しいミッションではなく、相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)ら数名の強豪ランナーの動きを見つつ、彼らのペースに対応していければ3位以内の順位は確保できるだろうと誰もが思っていた。
実際、田澤は周囲の様子を見ながら余裕を持って走っているように見えた。6000m地点では相澤や伊藤らとともに前に出て、田澤の視野にはオレゴンが入っていたはずだ。ところが8000mぐらいで相澤がギアを入れ、スピードを上げていくと後方に下がり出した。8800mからは、顎が上がり、腰が引けた走りになり、いつもの力強い走りが消えた。ラスト400mで後方の選手に次々と抜かれ、ゴールした田澤は両手を膝について、そのままトラックに座り込んだ。
「最低限3位以内に入りたかったんですけど、こういう大事な試合で力を発揮できないという自分の弱さが出た試合だと思います」
痛そうにみぞおちを手で押さえ、表情がゆがむ。
レースの敗因について問われると、口から出たのはスピードや体力面ではなく、調整面での失敗だった。
4月9日、金栗記念選抜中距離大会で5000mに出場。13分22秒60で実業団の有力選手を抑えて日本人トップの成績を残した。今後に向けて弾みをつけるタイムだったが、ここからの調整にミスがあったという。