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田澤廉「自分の弱さが出た」、三浦龍司「タイムはもっと上を」…世陸を目指す“大学トップランナー”の明暗はなぜ分かれた?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2022/05/10 06:02
日本長距離界の将来のエースであり、前回の箱根駅伝でともに2区を駆けた2人が対照的なレースを見せた
国立競技場は、東京五輪で日本新記録を樹立し、7位入賞を果たした縁起のいい場所だ。参加14名の中でトップの記録(8分09秒92)を持っているが今季初の3障のレースとなるため、8分20秒台を目標にしていた。
レースは、2000mを5分40秒94で通過し、残り1000mを2分39秒でいけば、8分20秒を切るタイムになる。それには少し及ばなかったが2分42秒で走り切り、ラストでは切れのいいスパートを見せ、設定内の8分22秒25で優勝した。
「今日は、これまで1500mや5000mというレースで磨いてきたスピードやスタミナを3000m障害という種目において、どれくらい成果が出るかということを確認するのと、国際レースで一気にペースアップしたり、ビルドアップしていくラスト1000mを想定して、ラストで切り替えて、追い込む力をつけるレースプランで臨みました。それがしっかり順位(優勝)に出たのはよかったです。ラストで逃げ切れて、まとめることができたのも評価したいですけど、22秒はあまりうれしくなかったですね。タイムはもっと上を目指していかないといけないと思います」
ラストスパートでは他選手との違いを見せつけ、この日の優勝で三浦株はさらに上昇。昨年の東京五輪の7位入賞につづき、オレゴンの世界陸上でも大きな期待が寄せられている。
「今日は意図的に…」三浦が試していた“あること”
周囲は高評価だが、三浦は危機感を隠さない。
「五輪に出てきたメンバーがフルメンかというと、そうではないと思います。今年は頭打ちになるんじゃないかって思っていますし、現実を見る1年になると思います」
冷静に自分の現在地を見定めている。だからなのだろう。三浦は実戦を無駄にせず、今回のレースでは、ある意図を持って臨んでいた。
昨年の日本選手権、東京五輪の予選もそうだが、三浦は集団での位置取りを慎重に行い、先頭に近い所に置いている。高2の時に足が合わなくて後ろから押されて走行妨害で失格になった経験から、またハードルの際に背中を押されて転倒するなどのリスクを避けるためだ。ただ、海外の猛者が集うレースでは、前にポジションを取ったからといって安心して飛べるわけではない。また、必ずしも理想的な位置取りができるわけでもなく、集団の中で小競り合いを繰り返し、我慢してのレースになる。そのため、三浦は国際試合の予行練習として、今回のレースで“あること”を試していた。