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シャルケは満員6万人超の大声援、三笘薫ゴールの試合ではミックスゾーンに現地ファンが…《欧州サッカー海外組取材で観た撮った》
posted2022/05/09 17:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Panoramic/AFLO
《4月16日、ハノーファー96対フォルトゥナ・デュッセルドルフ》
地下鉄から地上に出ると、そこにはかつての日常があった。
ユニフォームに身を包み、クラブのマフラーを巻いた男たちが歌いながら、タバコをふかしながら、談笑しながら、スタジアムへと向かう一本道を歩いている。
そして、漂ってくるビールの匂い! 彼らはかなりの割合でビール瓶を片手に歩いているのだ。前方にハノーファーのホームスタジアム、HDIアレーナがはっきり見えるようになると、道路は人でごった返し、道端のゴミ箱はビール瓶で溢れかえっている。きっと日本人がお茶を飲むような感覚なのだろう。
ワクチン接種証明書の提示とマスク着用が義務付けも
人波をかき分け、僕はスタジアム正面の入場ゲートとは異なるプレハブを目指して突き進んだ。アクレディテーションカード(取材パス)を受け取るためだ。これを首からぶら下げないと、スタジアムには入れない。
初めて訪れるスタジアムでは、報道受付や報道入口を求めてさまようハメになることが多々ある。これは日本のスタジアムでも同様で、報道関係者なんて来場者の中ではマイノリティだから、係員や警備員に尋ねても「さあ?」と首を傾げられることも少なくない。
しかし、ここはホスピタリティ溢れるドイツ。受付までの道順を示した地図がメールで送られてきた。だから僕は迷うことなく目的地に到着し、目当てのものを手に入れた。
ワクチン接種証明書の提示とマスクの着用が義務付けられていたが、提示を求められることはなく、記者席ではドイツ人記者たちはマスクを着用していなかった(誤解のないよう記しておくと、別の会場ではワクチン接種証明書を提示させられた)。
ミックスゾーンのあるなしはクラブによって違うらしい
記者席で配布されたメンバー表を眺める。デュッセルドルフの田中碧とアペルカンプ真大はスタメンだったが、ハノーファーの室屋成は残念ながらベンチスタートだった。
試合を動かしたのは田中だった。16分、自陣深くからロングフィードを放つと、相手DFがデュッセルドルフのFWを倒して一発退場となる。
しかし、デュッセルドルフは早々に手にした数的優位を最後まで生かせない。後半から室屋を送り出したハノーファーの堅守の前に、攻撃陣は沈黙を続けた。ゲーム終盤、田中が渾身のスルーパスを繰り出したものの、味方の反応が遅れてゴールラインを割ると、田中は頭を抱えた。試合は大きな見せ場もなく、スコアレスドローで終わった。
この日、ミックスゾーンは開かれなかった。ミックスゾーンのあるなしはクラブに委ねられているようだ。サポーターと一緒にスタジアムをあとにした僕は、地下鉄に乗らずに彼らのあとを付いて行き、20分ほど歩いてハノーファー中央駅まで戻った。