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シャルケは満員6万人超の大声援、三笘薫ゴールの試合ではミックスゾーンに現地ファンが…《欧州サッカー海外組取材で観た撮った》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byPanoramic/AFLO
posted2022/05/09 17:02
アンデルレヒト戦でゴールを決めた三笘薫。ゴール裏の相手サポーターの表情が意味の大きさを物語る
痛恨のドローに思い出す田中碧の言葉とは
《4月22日、フォルトゥナ・デュッセルドルフ対ディナモ・ドレスデン》
デュッセルドルフのホームスタジアム、エスプリ・アレーナは街の中心部から地下鉄で20分ほどの郊外にある。収容人数は5万4600人。2006年ドイツW杯の会場からは漏れたものの、アメフトの国際試合をはじめ多くのイベントに使用され、2部のチームにはもったいないほど立派なスタジアムだ。
6日前のハノーファー戦とは打って変わって、この日のデュッセルドルフは好調だった。前半のうちに2点を奪い、主導権を握ったままゲームを折り返したばかりか、後半の半ばまでゲームを優位に進めていた。
しかし、誰が言ったか「2-0は危険なスコア」。ビハインドのチームが1点を返すと、両チームの心理状態が逆転し、試合の流れが大きく変わる――まさに、この試合がそうだった。
71分にディナモ・ドレスデンが1点差に詰め寄ると、とたんにホームチームが浮き足立つ。あれよあれよという間に同点ゴールが決まり、2-2の引き分けに終わった。
試合終了直後、田中はうなだれ、天を仰ぎ、ショックを隠せない様子だった。記者席から眺めている限り、誰よりも敗戦を悔しがっているようだった。
蘇ってくるのは、10日前に行ったインタビューでの言葉だ。
「チームが勝てないと、メンバーが変わるんすよね。当然と言えば当然ですけど、それがキツくて」
チームは2試合連続してドロー。取り戻したばかりのポジションを再び失わなければいいのだが。
板倉所属のシャルケは6万人超の観客と大声援
《4月23日、シャルケ04対ヴェルダー・ブレーメン》
デュッセルドルフ中央駅から高速列車に乗って40分ほどでゲルゼンキルヘン中央駅に着いた。トラムに乗り換えて15分ほど揺られて降車する。青の大群の流れに身を任せてしばらく歩くと、目の前に圧倒的な大きさのフェルティンス・アレーナが飛び込んできた。
勝ち点56でドイツ2部の首位に立つシャルケと同54で2位に付けるブレーメンとの首位攻防戦とあって、チケットは完売。スタンドは6万人を超す観客で埋め尽くされた。
かつて、ここで内田篤人が愛され、今はマンチェスター・シティから期限付き移籍中の板倉滉が完全移籍での加入を望まれている。
メインスタンドから見て左側のゴール裏から「シャルケー」のコールが響くと、逆サイドのスタンドから「ヌールフィアー(04)」と呼応する。そのお決まりの掛け合いに、右奥のコーナー付近に押し込められたブレーメンサポーターの歌声は、すっかりかき消された。
しかし、試合が始まってしばらくすると、緑の集団の存在感が強まっていく。なんと、アウェイのブレーメンにゴールラッシュが生まれた。
結果は1-4。シャルケにとっては「1年に1度くらいはこんな日もある」といった最悪の内容。ボランチで出場した板倉は攻撃のビルドアップやドリブルで持ち運ぶプレーなどで彼らしさを見せたが、一方で、マークミスによって失点にも関与してしまった。