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《ブンデスでゴール量産・日本代表待望論も》奥川雅也がバイエルン相手に感じた“W杯ドイツ戦の勝機”「油断する時間帯があるというか…」
posted2022/04/27 17:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
2021-22シーズン、ドイツの地で最もコンスタントにゴールを奪っている日本人はビーレフェルトの奥川雅也(26歳)だ。ブンデス第31節終了時点で8ゴールはチーム内トップで、6月に控える日本代表戦に向けてもカタールW杯への新戦力として“待望論”がある。
そんな奥川に毎年恒例のインタビューを、4月17日のバイエルン戦翌日に現地で敢行。スコアラーとして進境著しい日々を過ごしている理由や日本代表への思い、W杯グループステージで同組となったドイツに対しての“勝機”などを語ってくれた。
周りからも「頼むぞ」っていう感じで言われています
――2021-22シーズンも残りわずかになりました。ここまでブンデスリーガ1部で8ゴール。ザルツブルク時代にも9ゴールを決めたシーズンがありましたが、今はどんな手応えを感じていますか?
「正直に言ってリーグのレベルが違うので、当時よりも自信になってますね。チーム状態も全然違って、ほぼ真逆なので」
――優勝して当たり前だったチームでの9点と、苦戦を強いられている状況での8点は価値が違う?
「ザルツにはうまい選手がたくさんいて、僕が中心というわけではなかった。今はこういう順位ということもあって(4月25日時点で降格圏の17位)、周りからも『頼むぞ』っていう感じで言われています。そういう意味でも自信になっているし、チームのために、という気持ちが強い。日本の報道や知り合いの反応もすごく違いますしね」
監督に「前でやりたい」「点を取りにいきたい」と直談判
――ビーレフェルトでは昨季後半の半年間もプレーして、1ゴールでした。何が変わったんでしょうか?
「昨季は、守備力やチームを助ける走力を買われてシーズン途中から入ったので、チームの攻撃の形になかなかフィットできなくて。ポジションもボランチで起用されることがあったんですけど、今シーズンが始まるとき、監督に『前でやりたい』と」
――直談判したんですね。
「『ちゃんと後ろにも下がるから、点を取りにいきたい』と伝えたんです。それが良かった。今季は選手がかなり入れ替わって、推進力のある選手も加わりましたし、僕が裏に抜けたときにちゃんと見てくれる選手も増えた。そういうのが今の得点数につながっていると思います」
――奥川選手としても、ヨーロッパで生き抜くうえで「結果を残さないとヤバいぞ」という気持ちで臨んだシーズンでした?
「そうですね。W杯イヤーでもありますから。あとは去年、半年間プレーしてチームに残ったので、チーム全体から頼られているように感じて、より責任感が強くなったというか。目に見える結果が一番わかりやすいので、そこにこだわって入ったシーズンでした」
――結果を出すために、プレーの優先順位を変えるとか、メンタル面で取り組んだことはありますか?
「そこはもう、前めの位置でプレーするというだけで、意識が自然と変わりました。まず考えたのは、どうやって点を取るか。プレシーズンの練習試合では、なかなか裏に抜ける選手がいなかったし、攻撃の迫力もなかった。でも自分が裏に抜ける役をしていくうちにチャンスが増えてきて。チャンスは少ないですけど、それを決め切ることでメンタルも強くなっていきました。プレシーズンの頃はチームとして厳しかったので、『俺が点取らなヤバい』と感じていましたね」
――「前でやりたい」という希望に対して、フランク・クラマー監督(※4月20日に解任)はすぐに起用してくれたんですか?
「そうですね、僕が前めに入っても守備をサボらない選手だということは理解してくれていたので。選手がガラッと替わったなかで、『左サイドかトップ下か、どっちがやりやすい?』とも言ってくれて、『左サイド』と答えたんですけど、プレシーズンではいろいろと試行錯誤しましたね。左サイドやトップ下だけでなく、右サイド、時にはFWもやりましたけど、去年との違いを見せられたので、前のポジションで起用し続けてくれています」