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シャルケは満員6万人超の大声援、三笘薫ゴールの試合ではミックスゾーンに現地ファンが…《欧州サッカー海外組取材で観た撮った》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byPanoramic/AFLO
posted2022/05/09 17:02
アンデルレヒト戦でゴールを決めた三笘薫。ゴール裏の相手サポーターの表情が意味の大きさを物語る
ビーレフェルト奥川はノイアー相手に……
《4月17日、アルミニア・ビーレフェルト対バイエルン・ミュンヘン》
次の目的地、ビーレフェルトへはその日のうちに向かった。
ハノーファーから高速列車で1時間弱。ビーレフェルトには歴史的建造物や有名な観光地がなく、あまりに特徴がなさすぎて、ドイツ国内には「ビーレフェルトは架空の都市で、実在しない」というジョークすらあるという――そんな街のクラブ、アルミニア・ビーレフェルトで奥川雅也はプレーしている。
翌朝、中央駅でデュッセルドルフ在住の日本人記者と落ち合い、地下鉄に乗ってシュコ・アレーナに向かう。この日の対戦相手は前人未到の10連覇が間近に迫る王者バイエルン。目下17位で残留争いの真っ只中にいるビーレフェルトにとっては、このタイミングで対戦したくない相手だ。電車には青のユニフォームの集団に混じって、赤いユニフォームをまとったサポーターもかなりの人数が乗車していた。
ビーレフェルトは4-4-2で守備ブロックを組んで王者の攻撃を凌ぎ、カウンターを狙う戦略だった。その急先鋒として期待されたのが、今季8得点を決めている右サイドハーフの奥川だ。
ゲームはほとんどの時間帯を王者が支配して進んだが、それでもビーレフェルトにチャンスがなかったわけではない。それどころか、ちょっとした運に恵まれれば、奥川が4点を決めていてもおかしくなかった。
16分にはCKのこぼれ球に反応して左足で狙ったが、わずかにバーの上。43分には味方のロングキックから抜け出し、GKノイアーの鼻先でボールに触ってネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定。前半のアディショナルタイムにはGKのキックから再び抜け出してシュートを放ったが、枠を捉えられなかった。
奥川が悔しがったノーファウルの判定
最大の見せ場は65分、ゴール前でフリーとなった奥川がシュートを放とうとした瞬間、後ろから倒されたように見えたがノーファウル。この好機を逃したビーレフェルトは0-3でバイエルンに屈した。
「あれはファウルだと思います。完全に足に当たった感触があったので」
試合後、ミックスゾーンに現れた奥川は不服そうな表情を見せた。前年に続く残留争いに「今日みたいに守るなら守る、蹴るなら蹴る、と戦い方をはっきりさせれば迷いなくやれる。あとは点を取らないと始まらないので、アグレッシブにやりたい」と決意を語った。
奥川には翌日、インタビューをすることになっていた。「15時に駅前のホテルで」とのアポイントを確認して、ミックスゾーンでの取材を終えた。