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あの只見がなぜ21世紀枠に? センバツ出場の立役者がいま明かす、“推薦プレゼンの裏側”…改めて考えた「高校野球はどうあるべきか」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/04/09 11:00
21世紀枠で甲子園初出場を果たした只見。東北地区の選考委員会でいかにして決まったのか?
小さな学校の大きな可能性への挑戦――。
只見のスローガンから始まった3分24秒のスピーチは、木村が直に見て、聞いて、触れて――そう、取材のように一つひとつの魅力を繋ぎ合わせた集大成だった。
センバツ決定に「人には見せられないくらい涙」
使命、歩み、想いが結実する。
「只見高校」
21世紀枠の発表でその名が耳に入った瞬間、木村は視聴覚室で崩れ落ちた。
「いやぁ、もう、恥ずかしくて人には見せられないくらい涙してしまいました」
少子高齢化の過疎の町。日本有数の豪雪地帯唯一の高校を甲子園へと導いた木村の情熱が、只見の町民に伝播する。
甲子園での試合前。アルプススタンドへの入場を待ちわびる応援団の様子を見に行った木村に人の輪ができる。
「木村先生、本当にありがとうございます!」
「冥途の土産ができたよ」
また、木村の目頭が熱くなる。
「私なんて別に、何をしたわけじゃないのに。そんなことを言われたら恐縮しちゃいますし、感極まっちゃいますよね」
「1時間53分の冒険」は何を伝えたか?
高校野球の聖地での幸福。
只見が甲子園で見せたものを木村が胸に刻む。そして、福島県高野連理事長として、彼らの足跡の意味を訴えかける。
「福島の高校球児には、『俺たちにだってできるんだ』って火をつけてもらいたいんです。野球をやっていれば、誰だって只見高校のプレーを見て何かを感じ取ったはずなんです。それを刺激にスイッチを入れて、夏へ向けて諦めず野球に励んでほしいですね」
ひとりの男の奮闘譚。
光を与えられし少年たちの1時間53分の冒険が、全ての球児に示した。
目指すべき、真っすぐな1本道。
高校野球の聖地・甲子園へ。
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