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ジャックドールは「令和のサイレンススズカ」なのか? 徹底比較して見えてきた違いと“最大の共通点”「このラップで走れる馬は…」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa/Photostud
posted2022/04/02 06:00
金鯱賞をレコードタイムで逃げ切ったジャックドール(右)。その戦績や毛色、脚質から、同馬を「令和のサイレンススズカ」と見る向きもある
9月の1勝クラスでは2番手から抜け出し、10月の浜名湖特別、11月のウェルカムステークス、今年1月の白富士ステークス、そして前走の金鯱賞では逃げ切って5連勝。今週末の大阪杯で、昨年の年度代表馬エフフォーリアと覇権を争うところまでやってきた。
この馬が逃げの戦術を取っているのは、サイレンススズカのように抑えることができないからではない。今も普段の調教では前に馬を置いて我慢する走りをさせており、どうしてもハナにこだわる馬がいた場合は、そちらを先に行かせ、番手からレースを運ぶこともできる。先手を取るのは、瞬発力勝負になると厳しいので、道中から後続になし崩しに脚を使わせ、自分の得意な消耗戦の形に持ち込むためだ。そのあたりが、サイレンススズカとは大きく異なる。
金鯱賞の超速ラップが証明する「絶対的な強さ」
まとめると、こうなる。ゆっくり走ることがストレスになるサイレンススズカは、序盤から飛ばして後続に大きな差をつけた。瞬発力勝負を避けたいジャックドールは、道中はそれほど後ろを大きく離さず、ロングスパートをかけて消耗戦に持ち込む。
サイレンススズカが金鯱賞を勝ったときの中京コースは、今より直線が短く、坂もなかったのだが、ジャックドールの速度の上げ下げと比較するために、2頭の金鯱賞のラップを以下に記す。
サイレンススズカ(1分57秒8)
12.8 - 11.2 - 11.2 - 11.5 - 11.4 - 11.4 - 12.0 - 12.4 - 11.7 - 12.2
ジャックドール(1分57秒2)
12.5 - 11.0 - 12.2 - 11.9 - 11.7 - 11.7 - 11.6 - 11.0 - 11.3 - 12.3
サイレンススズカは序盤に緩めるところがない。スタートから3ハロン目をジャックドールと比べるとわかる。そして後半。ジャックドールはラスト3ハロンで11秒0という速い脚を使っているが、サイレンススズカのそれは12秒4と、いったん息を入れている。
どちらも、「このラップで走れる馬はほかにいない」という超速ラップで走ることのできる、「絶対的な強さ」を持っている。
ジャックドールのそれが、圧倒的な強さでGIを3勝した同世代の王者エフフォーリアにどこまで通用するか。大阪杯のスタートが楽しみだ。