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《引退》メダリスト加藤条治は“ボロボロになって負ける姿”を伝えたかった…サンキョー廃部の“厳しい環境”も、森重航らは「世界でトップを張れる」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2022/04/02 17:00

《引退》メダリスト加藤条治は“ボロボロになって負ける姿”を伝えたかった…サンキョー廃部の“厳しい環境”も、森重航らは「世界でトップを張れる」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

スピードスケートのメダリスト加藤条治37歳が引退。会見で語った「理想の引き際」、そして環境の厳しさが伝えられるスケートの未来をどう考える?

 結果は最下位だったが、これが重要だった。「途中棄権と最下位はまったく違う」(加藤)からだ。

 引退会見では「あのレースが、今までのスケート人生の中で内容が一番濃かった。期待されていなかったと思うけど、周りで支えてくれる人が多かった。4年間、体がまったく動いていなかったのに、全盛期並みに動けた。結果的に転んでしまったが、自分の力を出し切れて、自分の可能性や生き様を見せることができた。集大成があのレースで良かった」と噛みしめるように言った。

かつて所属・日本電産サンキョーが廃部…今後の活動は?

 かつて所属した日本電産サンキョーは3月31日をもって廃部となった。名コーチ、ヨハン・デビットの指導や小平奈緒の活躍もあり、ナショナルチームは平昌五輪と北京五輪の2大会で金メダル4個、銀メダル5個、銅メダル2個と活躍したが、所属チームを取り巻く環境は厳しい。同社は「ここ数年スケート選手を目指す若者も減り、レベルも落ちてきたことから、企業がスピードスケート競技の発展に貢献するという目的について展望が持てなくなった」と廃部の理由を説明。スケート人口の減少は加藤も憂慮しており、今後は「競技だけじゃないスケートの楽しみ方」を広めることや「普及活動」にも力を注ぎたいと考えている。

 ただ、引退を決意した理由の一つにもなっているように、頼もしい後輩たちの出現がある。北京五輪では山形中央高校の後輩でもある21歳の森重航(専修大学)が男子ではバンクーバー五輪の長島・加藤以来3大会ぶりの表彰台となる銅メダルを獲得。日本記録保持者の新濱立也や村上右磨ら、実力者もいる。

「世界でトップを張れるような選手が複数人出てきた。北京五輪では森重選手の銅メダル1つだったけど、もっと上回っていけるポテンシャルをみんな持っていると思う」

 しっかり負ける姿を見せて現役を退いた男の、力強いエールだった。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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