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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「ドヘニーは身も心も削られていた」元世界王者・飯田覚士が分析する井上尚弥の“打たせずに倒す”勝ち方…「あえて課題をあげるとすれば?」
posted2024/09/06 18:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥が、37歳の挑戦者TJ・ドヘニーを7回TKOででくだし、2度目の防衛を果たした。最後はドヘニーが腰を痛めて棄権という予想外の幕切れとなったが、この一戦を元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏はどう見たのか。前後編にわたって徹底解説する!<全2回の後編/前編も公開中>
挑戦者ドヘニーの慎重なスタート
来ないというなら、誘うしかない。
4団体統一世界スーパーバンタム級王者“モンスター”井上尚弥が元IBF同級王者のTJ・ドヘニー(アイルランド)を迎えた防衛戦は5ラウンドに入った。
パンチの威力も軌道もインプットしたうえでドヘニーと対峙した井上は自らコーナーを背負い、次にL字ガードにして誘い出そうとする。しかし相手はなかなか乗ってこない。
飯田はこのときの挑戦者の感情をこう読み解く。
「チャレンジャーならもっと果敢に行くべきだと思う人はいるでしょう。ただドヘニー選手からすれば、行けばやられるってもう分かっている。行きたくても行けないっていうのが絶対にあったんじゃないか、と。それでもカウンターを狙って動きつつ左右のボディーを細かく当てようとしますが、尚弥選手の一発が鋭くて重い。次の6ラウンドになると、さらに追い詰められていくことになります」
王者が一層、ギアを上げていく6ラウンド。ノーモーションの右が実に効果的で、ワンツーからの左ボディー、右のストレートボディーと次々にヒットさせていく。ドヘニーも対抗しようとパンチを繰り出すものの、押し返すには至らない。ラウンドの最後は、王者がコーナーに詰めてコンビネーションを見舞う。そして7ラウンド、開始早々右を浴びせて後退させ、連打のスイッチが入った場面でドヘニーが腰を押さえて続行不可能となり、レフェリーがストップした。
アクシデントによる幕切れ。ただ、もはやドヘニーに勝ち筋はなく、ラウンドが進んでいけばKOで仕留め切ったはずだと言う。