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「ナオこそ『チャレッソ』よ」10代からの仲、結婚式にも…17位小平奈緒に“解説者”李相花が涙した理由
posted2022/02/14 17:05
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JMPA
4年前とは異なる景色に戸惑いながらも前を向いた。
2月13日のスピードスケート女子500m。前回女王の小平奈緒(相澤病院)は15組中の13組に登場。昨シーズンの世界選手権優勝者であるアンゲリナ・ゴリコワ(ROC)と同走で滑ったが、スタート1歩目で左足がつまずき、38秒09という低タイムでのゴールとなった。連覇はならず、17位というまさかの結果だった。
「最初の1歩目で左足が引っかかってしまって、その後、立て直せませんでした。自分のスケートがどんどん離れていく感覚で、自分のやりたい表現がまったくできなかった。足がとられてしまった瞬間に、頭の中が真っ白になってしまいました」
盟友イ・サンファも放送席で涙
どれほど緻密な準備をしてきたか、小平の歩みを見てきた者にしてみれば言葉による説明は不要だ。コンマ1秒縮めるための努力を重ねてたどりついた4年間の結晶が1歩目で砕けた。心中は察するばかりだが、小平はそれでも真摯に滑りを振り返った。
その前、会場の放送席では元韓国代表の李相花(イ・サンファ)さんが、涙を流していた。李さんは女子500mの世界記録保持者であり、2010年バンクーバー五輪と2014年ソチ五輪でこの種目の連覇を達成している。今回は韓国のテレビ局の解説者として北京を訪れていた。
小平はレース直後にリンクサイドで韓国のテレビ局のインタビューを受けた際、その場にいるであろうと思って李さんを探したというが、会うことはできなかった。
「ちょっと、相花(サンファ)を探せなかったんです。韓国のテレビのインタビューを受けたけど、相花がどうしても見つからなくて……」
「『奈緒ならできるよ』という言葉を何度も…」
大会に備えて北京入りした時、李さんは「奈緒のレースを見たら泣いてしまいそう」と語ったことが報道されていた。
李さんとはずっと連絡を取り合ってきたという小平は、近くに来ている親友と少しでも言葉をかわしたかったのだろう。