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「うちは全員、野手兼ピッチャーなんで」異色だった高知高の“オール二刀流戦術”《球数制限でも“半数以上”が完投の中で…》
posted2022/03/27 06:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
17/32。
この割合は、センバツ出場32チームのうち初戦で完投したピッチャーの人数である。
今大会も甲子園では「1週間500球」の球数制限を設けてはいるが、エースに試合を託すチームが半数以上を占めたわけだ。そんな現状が顕在化するなか、実に大胆な継投で甲子園を驚かせたチームがあった。
四国代表の高知だ。
監督「うちは全員、野手兼ピッチャーなんで」
東洋大姫路との初戦。エースナンバーを背負う山下圭太が、センバツでは14人目の「1番・ピッチャー」で出場したことも話題となったが、継投でも個性を披露する。2番手で3回を投げたアンダースローの中嶋泰輔、9回にゲームを締めくくった右腕の日野灯が、いずれも公式戦初登板だったことだ。
甲子園という大舞台での大胆な継投策について、監督の濱口佳久が腹案を明かした。
「中嶋はアンダースローでしっかりしたボールを投げて使いやすい。本当は先発も考えたんですが、立ち上がりが不安だったので山下にしました。日野は角度のあるボールを投げるのでショートイニングならいけるだろうと」
高知の投手陣は実にバラエティ豊かだ。
エースの山下は、昨秋に背番号5をつけていたことからもサードを兼務し、状況によっては外野も守る。センバツでファーストを守った高橋友は秋に背番号1を背負い、4番バッターの川竹巧真も140キロを超えるストレートを投げる本格派である。
さらに濱口が言うには、甲子園デビューを飾った中嶋と日野も、「もともとは野手だった」と付け加えた。
「うちは全員、野手兼ピッチャーなんで」
指揮官がさらっと言ってのける。
「高校で伸びる子はたくさんいるので、そこを見極めるようにしています。ピッチング、バッティングはもちろんですけど、走・攻・守・投の全てが野球の醍醐味ですから」
そんな高知も、この方針は苦肉の策のような決断でもあった。