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「うちは全員、野手兼ピッチャーなんで」異色だった高知高の“オール二刀流戦術”《球数制限でも“半数以上”が完投の中で…》
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/03/27 06:00
「このチームは『ピッチャー探し』から始まりましたから」。気づけば高知高は「全員野手兼ピッチャー」のチームになっていた
国学院久我山戦は守備のミスが響き3-6で敗戦と、「全員野手兼ピッチャー」のチームは特性を発揮しきれず涙を飲んだ。
だが、「絶対的エース」への全幅の信頼から脱却した高知は、甲子園で新たなスタイルを全国に印象付けた。
「ひとりが崩れたとしても『他にもいる』って」
自身もピッチャー経験があり、制球力の低さから野手に専念した、主将でセンターの谷崎陽が「新生・高知」の結束をこう誇る。
「ポジションはいろいろと変わりますけど、守備面での不安はありません。特に山下がそうなんですけど、野手として打って、ピッチャーでも抑えないといけないっていうプレッシャーや責任を背負って頑張っているあいつらの姿を見ていると、『こいつらすごいな』って尊敬しかないです。そういう選手がたくさんいるので、ひとりが崩れたとしても『他にもいる』って安心感があります」
センバツでは多彩なブルペンワークで爪痕を残した。だが、これが全てではない。
甲子園では登板しなかった秋に背番号1だった高橋に、調整が遅れてベンチ入りを逃した左腕の小西匠など、チームにはまだまだ“二刀流”が控えている。
「いやいや。メンバーでは山下、高橋、川竹、日野、中嶋の5人くらいですよ、今、ちゃんと投げられるのは」
控えめながらも監督の濱口は、少し自信を覗かせるように夏を見据えていた。この言葉の裏を返せば、「ちゃんと投げられる野手」が増える可能性を秘めていることとなる。
「高橋や小西も含めて、本格的に投げられるピッチャーが出てくれば、他のピッチャーも生きてくると思います」
全員がリアル二刀流。
実現は難しいのかもしれない。
だがロマンは、ある。
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