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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「一室にトレーニング器具は2つだけ」飯田貴之、近藤幸太郎ら…青学大ランナーが始発でも通いたい“人気ジムの正体”
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTomosuke Imai
posted2022/04/01 11:00
今年の箱根駅伝で活躍した青学大の飯田貴之選手をはじめ、多くのランナーを指導する佐藤基之フィジカルトレーナー
「強くなるためには、練習・準備・ケアの3つが必要不可欠です。まず準備。準備がちゃんと整うことで100%の練習ができますよね。その後は、使った身体をケア。ケアがしっかりできていれば、また良い準備ができる。だからどれか一つでも欠けたらダメで、3つをきちんとできている人がフィジカル強化に入っていきます。いきなりフィジカルをやりたいというのは、私に言わせればあり得ないです」
トレーニングスタジオの中を見渡すと、ルームランナーがポツンと1つあるだけ。他に筋トレ系の器具は1種類しかない。そのせいか、メニューは実にシンプルだ。
例えば、スクワット系の同じ動作を1000回以上みっちり1時間40分かけて行う選手もいるという。片脚ずつで、両方を合わせると3時間を超える。しかも中には、30km走をした後に行う選手もいるので、レースで言えば30km以降に動く足を作ることができる。トレーニング中、佐藤は選手の動きを終わるまで見届ける。後半は惰性で動いてしまったり、疲れて違う動きになると、「そこの筋肉使ったらダメだよ」などと声をかける。
「陸上界の通例トレーニングから入ることは一切ありません」
「選手個々の筋骨格の違い、身体の使い方、走る動作がどうなのか、どこを伸ばせばさらに成長するのかという視点でメニューを作っていきます。例えば、練習前後、疲労していない時している時、様々なタイミングで身体に触れますし、また走る動作についても朝錬、午後錬、雨の日、風の日、ポイント、ポイント後のジョグなど、あらゆる状況での走りを見ます。そこに、過去のトレーニング情報、既往歴などの情報を加味して、初期メニューを立て、トライ&エラーで徐々に内容をアップデートしていきます。
陸上でよく見聞きする通例のトレーニングから入ることは一切ありません。ウェイト器具を使っての筋トレはすぐにしないし、フォームには全く干渉しないです。脇が広がっていようが、蟹股だろうが、それはその人の骨格による個性が影響していることもあるので、直したから速く走れるかというと微妙なんですよ。もちろんウェイトトレーニング、フォーム改善を否定しているわけではありません。必要とする選手にやるべき時期に介入するという事です。
SNSなどでメニューも一切公表していませんね。よくSNSでトレーニングを公開している人も見かけますが、僕は絶対にやらないです(笑)。もし見よう見まねで、怪我でもしたらとんでもないことになりますから」
なぜ「筋トレ」には積極的ではないのか?
フォームをいじらず、通例の筋トレにも慎重な姿勢。近年はウエイトを積極的に取り入れている大学や実業団が多いのだが……。