- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
近藤幸太郎「万年5位から抜け出したい」、飯田貴之「箱根では後悔したくない」…人気トレーナーが目撃した“青学大生の本気”
posted2022/04/01 11:01
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Tomosuke Imai
飯田が佐藤のトレーニングスタジオを訪れたのは、大学2年の箱根駅伝が終わった後だった。5区を駆け、優勝に貢献したが、直後に疲労骨折が発覚する。実は、佐藤は箱根前の学連の10000m記録会に、担当する学生たちの走りを見るため出向いていた。
「ちょうど『ヴェイパーフライ ネクスト%』というナイキの厚底シューズが出てきた頃だったんですけど、その時、僕が見ている学生から『飯田の走り、どうですか?』と聞かれたので、『しばらく見てなかった僕が言うのもなんだけど、あの筋力であのシューズだと故障のリスクが高くなるね』と言ったんです。
よくトランポリンに例えて説明するんですが、上手く飛べない選手はバネと一緒に自分も沈んでしまって足にものすごく負荷をかけてしまいます。あの時の飯田はまさにそうで、筋力が足りず、シューズに合った走りが全くできていませんでした」
当時多くの選手がこぞって着用していた厚底シューズだったが、佐藤はトレーニングに来る選手たちにすぐには履かせなかった。シューズの能力を引き出すだけのフィジカルが足りず、遊ばれるだけだと感じていたからだ。
なぜ安易に厚底シューズを頼ってはいけないのか?
「『みんながあの靴を履いてタイムを出している』って言ってくるんですけど、僕からしたら自分の能力が足りないのにギアの力を借りて走るなんてありえない。そのシューズを履いてタイムを出したとしても、それは本当の意味でタイムが出たことにならないでしょ、と。むしろ準備を怠って履き続ければ一気に故障のリスクが高まる危険性がありました」
厚底シューズによってタイムが出るようになったのは間違いない。学生でも10000mで27分台が出るようになり、学生から実業団選手、市民ランナーに至るまで影響を与え、マラソンを含めてレースがより高速化した。その一方で、従来とは異なる故障が増えている事実もある。佐藤は、安易に厚底のシューズに頼るべきではないと警鐘を鳴らす。