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「マラソン成功の再現性が低い」好タイムが続出しても日本男子マラソンが世界で勝てないのはなぜか?〈大迫傑が現役復帰を表明〉
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2022/02/10 11:04
東京五輪を最後に現役を引退していた大迫傑が、現役復帰を発表した
「昨年のびわ湖で2時間7~8分台で走った選手が今回はうまくいかなかった。マラソン成功の再現性が低かったところは否めません」と高岡ディレクターは指摘している。
瀬古リーダーも「これでは前の記録がまぐれと言われても仕方がない。安定した力をつけていくのが課題だと思います。1回は当たるんだよ。だけど2回連続当てるのは結構難しいんです。なぜ走れたのかわからない選手はダメですね。これだから走れたという、自分のメソッドを確立することで、再現性が高くなっていくと思います」と話していた。
高岡ディレクターによると初マラソンだからこそ快走できるパターンがあるという。
「初マラソンは怖さを知らないところが成功につながっている部分があると思います。でも、2回目以降はマラソンの苦しさを知っているために、思い切ったスパートができないことがあるんです。今後、繰り返して成功するためには、体調を含めて自分をよく理解したうえで、トレーニングを積み上げていく必要があるんじゃないでしょうか。パリ五輪に向けては、外国人選手と対等な勝負ができれば強い日本チームが作っていけるかなと思っています」(高岡ディレクター)
別府大分では初マラソンの古賀と西山が終盤にスパートをかけたが、今後のマラソンでも攻め続けることができるのか。
日本人のタイムが上がっているからといって、世界に近づいているわけではない。パンデミックが落ち着けば、海外勢もどんどんタイムを上げていくことが予想されるからだ。本当の意味で実力をつけるには、高岡ディレクターが指摘するように、再現性を高めて、世界と勝負していくことを考えないといけない。
日本人で「2時間7分切りを複数回達成」はたった2人
昨夏の東京五輪は大迫傑が6位に食い込んだが、中村匠吾(富士通)と服部勇馬(トヨタ自動車)は勝負できなかった。東京五輪が1年延期され、コースも札幌に移転するという“不運”が重なったとはいえ、これが日本の実力だ。
世界のトップクラスがマラソンに本格参戦するのは年に2本ほど。トラック種目と比べて本数を多くこなすことができないため、プロランナーは確実に好結果を残すことが求められる。びわ湖で2時間4分56秒の日本記録を樹立した鈴木健吾(富士通)でも、マラソンを6回走ってセカンドベストは2時間8分50秒。日本人で2時間7分切りを複数回達成しているのは、大迫と井上大仁(三菱重工)しかいない。