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大阪国際で話題「男子選手が残り1kmまで先導していいのか?」…マラソン界でも議論が続く“ペースメーカー是非問題”
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byAFLO
posted2022/02/06 17:15
大阪国際女子マラソン。残り1kmの30km付近まで男子ペースメーカーが先導したことが話題となった
ペースメーカー制度が確立されたことで、高速レースに拍車がかかり、世界のメジャーレースでは好タイムが続出するようになった。しかし、30kmまでは選手間の駆け引きがなくなり、面白くなくなったという意見もある。そのため伝統を誇るボストンやニューヨークシティではいまだにペースメーカーを採用していない。
ペースメーカー不在の“ガチンコ勝負”を求める傾向も
好タイムを狙うためには欠かせない存在となったペースメーカーだが、オリンピックや世界選手権には存在しない。日本陸連はその点を考慮して、東京五輪の代表選考にMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を開催。本番(を予定していた)コースで、本番に近い気候、本番と同じようにペースメーカー不在の“ガチンコ勝負”で実力をはかるようになったのだ。
1987年の福岡国際で中山竹通が雪まじりの雨のなかを序盤から世界記録を上回るハイペースでぶっ飛ばしたように、ペースメーカーがいない時代には何が起こるかわからない緊張感があった。いまは30kmまではウォーミングアップで、30kmからが“本番”という印象がある。
今回の大阪国際女子マラソンは今夏のオレゴン世界選手権の日本代表選考レースになっている。ペースメーカーをつけるのか、何kmまで引っ張るかは、大会主催者の判断になる。しかし、世界大会の選考レースとなる大会は、日本陸連主導で「ペースメーカーは30kmまで」に限定するなどルール化する必要があるのかもしれない。
いずれにしても選手にとっては公平感があり、できれば観る者をワクワクさせるようなレース作りを考えていただきたいと思う。