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野球クロスロードBACK NUMBER
「こいつらを負けさせたらダメだ」聖光学院の名参謀を奮い立たせた“キャプテンの日誌”…「力がない世代」が甲子園切符を掴むまで
posted2022/01/29 11:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
「斎藤さん、野球を続けているから負けるんです。極端に言えば、生きていれば負けることもあるんです。負けも正解なんです」
昨年の夏。聖光学院の夏の連覇が途絶えた直後、電話で監督の斎藤智也を奮い立たせてくれたのは、横浜の元監督、渡辺元智だった。
「実際に途切れてみたら意外にすっきりしたんだ」
福島の絶対王者が敗れたニュースが全国を駆け巡ると、メールや電話でひっきりなしに斎藤のスマートホンが震えた。どれもが身に染みたが、とりわけ春夏通算で5度の全国制覇を遂げた名将の激励は、日本一の頂に挑戦し続ける男の琴線に激しく触れた。
「甲子園に行けば日本一を目指すのは当たり前なわけだけど、今まではそう口で言ってきても『甲子園に行かなかったら俺たちが聖光学院の歴史に泥を塗ってしまう』ってプレッシャーばっかと戦ってきたんじゃねぇか? って。それは生徒らもそうだし、もしかしたら俺も含めてね。でも、実際に途切れてみたら意外にすっきりしたんだ。『これだ。これが必要だったんだ』と」
敗者として迎える秋。リスタートを切ったチームがどういった歩みを見せるか。それは斎藤にとって、大きな関心事でもあった。
とはいえ、「センバツへの切符を手にするために」といった皮算用や不遜はない。なぜなら、現世代のチームは例年より力が劣ることを知っていたからだ。
「力がない代ほど、うちの生徒は原点に立ち返れっから」
現に昨秋の県大会では3年ぶりに優勝を果たし、東北大会でも準優勝と結果を残したが、チーム打率は2割6分7厘で、本塁打はわずか1本だった。4年ぶり6回目のセンバツ出場を実現できたのは、県大会から10試合中9試合に登板し、防御率1.00だったエース・佐山未來の安定感、6失策の堅い守り。26犠打など繋ぎに徹した野球も実を結んだ。
「最近の聖光では顕著な数字だよね」
斎藤は机上で判断できる「有形の力」を認めつつ、今年のチームの支えとなっているのは「無形の力」だと強調する。
「力がない代ほど、うちの生徒は原点に立ち返れっから。連覇してっ時なら『聖光のユニフォームを着てるし、なんとかなっぺ』っていうのがどこかにあるもんだけど、今年はそれがない。『俺たちは力がない。どんな相手にも負ける可能性がある』ってことを受け止めて、謙虚に我慢強く、泥臭く戦ってくれたよね。世間的にはかっこわりぃかもしんねぇけど、秋は1試合ごとにどっしり感が少しずつ増してきた。『無形の力』が蓄積されて、試合で発揮されたのはあったよね」
そう話す斎藤に、ストレートにぶつけた。
――正直、今年のチームがセンバツに行けると思いましたか?