- #1
- #2
野球クロスロードBACK NUMBER
「こいつらを負けさせたらダメだ」聖光学院の名参謀を奮い立たせた“キャプテンの日誌”…「力がない世代」が甲子園切符を掴むまで
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2022/01/29 11:01
ミーティング中の聖光学院・斎藤智也監督
3年生が夏に苦杯を嘗めさせられた相手に勝利し、「流れは変わった」と横山が言う。
「こういう歩みがあるから、神宮とか甲子園、日本一への熱量の話になった時に『違う!』って言えるんだよね。もし、あのチームが途中でくたばったら俺、生徒らに頭下げるつもりだったから。『申し訳なかった』って」
チームの軌跡は結果が物語る。
秋の福島県を制した。東北大会では決勝戦で敗れ、優勝チームにだけ参加資格が与えられる明治神宮大会には出場できなかったが、センバツ出場、日本一への挑戦権を得た。
「これこそが、聖光学院の真骨頂だったよなって」
花巻東に屈した選手たちは泣き崩れた。横山が誓った嬉し涙はお預けとなったが、それは聖光学院にとって意味のある光だった。横山がしみじみと感情を漏らす。
「力がない世代が歩みをきちっとして、結果を出せた。これこそが、聖光学院の真骨頂だったよなって思うよね」
奇跡は起きるものでなく、起こすもの。
横山を中心にそれを実現させたチームは、今、監督の斎藤によってセンバツに向け仕上げの段階を迎えようとしている。
「お前ら負けたくせにセンバツに出るんだよ」
冬場、こんな趣旨のミーティングを何度も行っている。今一度、「力がない」ことの再認識をさせているのだ。
監督である自分だって最初はセンバツなど懐疑的だった。でも今は、横山が「このチームは負けないような気がするんです」と、繰り返してきた意味が分かる。だからこそ、厳しさを投げかけながらも、必ず選手の歩みを尊重することを忘れない。
「『無形の力』を横山コーチと一緒にお前らも信じてやってきたんだったら、必ずそれはプラスに作用すっから。力がねぇなりに背伸びせず、泥臭くチャレンジャーでいこう」
「甲子園で見んのはひとつ。日本一」
捲土重来の春。野心が増殖する。
斎藤が不敵な笑みを浮かべる時は、いつだってそんな思惑を口に出す。
「『甲子園に出て1個も勝てなかったら、かっこつかねぇべ』とか、くだらねぇプライドに足引っ張られんじゃなくてね。ここから先の甲子園で見んのはひとつ。日本一」(つづく)