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野球クロスロードBACK NUMBER
昨夏の県予選は衝撃の敗戦…失意の“ラストバッター”に主将は言った「悔しいのはお前らだけじゃねぇ!」《聖光学院、甲子園へ!》
posted2022/01/29 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
「俺たちは、冬場にやり切れずセンバツを迎えて、初戦であっけなく負けて、春の大会にも負けて目が覚めた。そこに今から気づけ」
聖光学院の主将、赤堀颯は活を入れられた。
言葉の主は高橋晋平。チームが初めてセンバツ出場を遂げた2007年の主将である。高校時代、補欠ながらフリー打撃では人一倍声を張り続けて終了時に失神するなど、誰よりも「やり切る」を体現してきたOBの経験則が赤堀の闘争本能を活性化させた。
主将「『日本一を獲りたい』じゃなくて『獲る』って」
4年ぶり6回目のセンバツ切符を手にしたとはいえ、チームが望む大願を果たせたわけではない。赤堀は再度、顧みる。
「自分たちは9割がた『いったる!』って気持ちで日本一を掲げていましたけど、秋の大会を通じて現実を少しずつ見せつけられて。『今のままじゃ日本一は到底無理だ』って身に染みて感じさせられました」
主将の赤堀をはじめチームの認識として、それは現在地の確認であって、日本一という目標におじけづいたわけではない。
むしろ、その逆だ。
「『無理やな』と思わされた分、余計一番になりたくなりました。『日本一を獲りたい』じゃなくて『獲る』って」
入学後、初練習後のミーティングで受けた“衝撃”
京都出身。ロッテの藤原恭大らを輩出した大阪の名門、オール枚方ボーイズでは全国大会に出場した。その赤堀が関西ではなく聖光学院を選んだのは、「東北の高校で初めての日本一になりたい」と思ったからであり、もっと言えば一目ぼれでもあったのだという。
「実はこっそりグラウンドの外から見学して。他の高校もいくつか観に行ったんですけど、聖光学院ほど声を張り上げながら泥まみれになって練習しているところがなかったんで」
覚悟を決め京都から福島までやってきた赤堀にとって、「聖光学院で日本一」はすぐに揺るがぬ信念となった。
そんな志を試すように、赤堀ら新入生は聖光学院の洗礼を受けた。忘れもしない、初練習後のミーティングだ。部長の横山博英から現実を突きつけられた。
「全然だめだ。この代は終わりかもしれないな。元気があって頑張れそうなヤツが多いのは取り柄だけど、それ以外は何もない」