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高川学園「ぐるぐるトルメンタ」や東福岡「歩く壁」など斬新セットプレー… では世界的流行《FKで壁下に寝そべるアレ》の名前は?
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2022/01/08 17:01
高川学園の「トルメンタ」と“壁の下で寝そべるアレ”。フリーキック1つをとってもフットボールの世界は奥深い
もちろんプロでは守備者のプレーレベル上こうしたトリックプレーが実を結びづらいという側面はある。しかし一方で、高校生たちはフットボールというものを柔軟に捉え、これまでにないプレーを編み出していることも事実だ。
4000近い高校の頂点を決める大会。それもたった一度の負けも許されない戦いの中で、少しでも違いを生み出そうとセットプレーを磨く高校が多くあるということ。特に一発勝負が多いこの世代において、とても合理的な強化ポイントである。
プロの世界で生まれた“新手”はあるのか?
ではプロからこのようなトリックプレーが生み出されて、しかもそれがニューノーマルとなった例はあるのだろうか。
攻撃側ではないのだが、フリーキックで壁を作る際によく見られるようになった“アレ”。実は世界最高峰の舞台でひとりの選手が見せたプレーがバズったことで、一気に普及したのである。
2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ。グループB第3節、バルセロナvsインテルの一戦。
65分にバルセロナが敵陣ペナルティボックスの少し外側でフリーキックを獲得すると、ルイス・スアレスがボールをセットした。
直接ゴールを狙える位置。インテルは5人の壁を作り、GKサミール・ハンダノビッチは壁とは反対側のコースで構える。そしてキッカーのスアレスがシュートを放つ――その瞬間だった。
壁の脇に立っていたマルセロ・ブロゾビッチが突如、壁の後方でスライディング。スアレスは壁の5人がジャンプした下のコースを狙ったが、そこに滑り込んだブロゾビッチの背中に当たって軌道が変わり、枠外に外れたのだ。
ゴール裏のカメラからは、壁をすり抜けてGKのいないコースに向かうボールをブロゾビッチが防ぐ様子が映っており、まさに失点の窮地から救うファインプレーだった。
さしものメッシもスタンドで笑うしかなかった
このシーンの後、右腕の骨折で欠場しカンプノウのスタンドから観戦していたリオネル・メッシは驚きを含む笑みを浮かべた。さしものメッシも壁下を狙ったフリーキックであれをやられると、どうにもならなかったことだろう。
ちなみにこの試合、前半終了間際のフィリペ・コウチーニョのフリーキックの際にもブロゾビッチが同じアクションを取っていたことを考えると、事前に予測したうえでの動きと見て取れる。そしてそれが見事に成功したのである。